第404話 双子の苦悩

オルタとヴェーレスの話では、実は二人とシルヴィアは割とこまめに連絡を取りあっていたらしい。


二人とも≪次元回廊≫を使えるので、如何に離れた場所に住んでいようとも会いに来るのはそう難しいことでは無かったし、魔道の≪遠話≫を使えば話もできる。

クロードの近況なども聞いていたそうだ。


あんなにシルヴィアといつも一緒にいたのにまるで気が付かなかった俺って、一体……。


この事実を知ったクロードは何だか世の父親同様の疎外感を感じたが、会うことをどこか避けていたのは自分だったため、何も言うことはできなかった。


ヴェーレスがオルタの背を押し、クロードの方に近づくように促した。


「父上と会うのが正直怖かった。俺のしたことを怒っているのではないかと恐れていた。今日もヴェーレスと一緒でなければ、到底ここには来られなかった」


眼に涙をため、肩を震わせていた。


久しぶりに会ったオルタは、素直で優しいオルタのままだったのだ。


そのオルタがなぜ、あのように苛烈な大陸統一を押し進めたのか、こうして直にその姿を見てもピンとこない。


クロードはオルタを優しく抱き寄せ、まるで幼子を落ち着かせでもするようにその背を軽くたたいた。


「オルタ、俺はお前のことを何一つ怒ってなどいないよ。会うことを避けていたのは、お前がやろうとしていたことの妨げになるのが嫌だっただけだ」


「父上が為そうとしていたこととは逆行するということを俺はわかっていた。妨げになる人の命だって、本当は一人たりとも奪いたかったわけではない。だけど、俺には時間がなかった。来たる脅威に備えるためには一刻も早く民の団結を図る必要があった」


「オルタ? 来たる脅威とは何のことだ」


クロードはオルタの両肩を掴み、問いただす。


「今はまだ何も言えないんだ。俺とヴェーレスの存在がもたらした不確定さと運命フォーチュンの揺らぎを見極めるまでは……」


「ヴェーレス、お前も何か知っているのか」


「ごめんなさい。お父様、本当に今は何も言えないの。でも、私たちを信じてほしい。然るべき時に必ず真相を話すわ」


重苦しい沈黙が人気ひとけのない公園内に立ち込めていた。


唐突に見えたオルタの一連の行動にはやはり何か事情があるようだった。

そして今はそれを明かすことができない苦悩も双子たちから伝わってくる。


その苦悩を分かち合うことができない寂しさと無力感がクロードの胸の内を締め付けた。


二人の表情には何か思い詰めたような影があり、とても冗談を言っているようには聞こえない。


クロードほどではないものの、人としては破格の力を持つ双子がこれほどに思い悩むほどの脅威とは一体何だろう。


そしてなぜ俺に明かすことができないのか。


だが賢明な二人のことだ。

よほどの理由があるのだろうし、親である自分ができることは信じてやることだけしかない。


「わかった。その時が来るのを待つよ。だが、力が必要な時は遠慮せずに言ってくれ。俺は、お前たちの父親なんだからな。実は、さっき、シルヴィアと連絡を取り合っていたのを知って少しショックだったんだ。あいつも俺には教えてくれなかったし、こういうことが続くと傷つくだろ」


クロードは何とか笑顔を浮かべ、冗談のような言葉をようやく吐き出した。

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