第382話 自明の理
肉体が消滅すると、この状態特有の大いなる万能感が戻ってきた。
そして、悟る。
人間としてのクロードなどもう既に存在していないことに。
自らが創造した肉体によって人間を演じることに固執している自分は、もはや異世界に放り出され彷徨った当初の自分とは似て非なるもので、厳密には同一ではない。
姿形も自分はこんな感じだというイメージに基づいているにすぎず、もしかしたら自分を産み育ててきた母親などであればどこかに違和感を感じてしまうかもしれない。
神として認められたことで≪
意識の連続性はあると思う。
しかし、人間の肉体から解放されたこの状態が本当の自分であり、人間クロードの方が仮初の姿であることは、今となっては自明の理だ。
≪恩寵≫による記憶の消失など取るに足りない。
急にそう思えてきた。
もう既に存在しない人間の記憶。
それが失われたとて、何だというのだ。
自分は元の世界を捨て、この異世界を選んだ。
この異世界に来てからの記憶が消えないのであれば何も問題はないではないか。
人間の脳を使った思考から解放されたためであろうか。
今はこの最終ミッションを仕組んだ者の意図が少しわかった気がする。
≪恩寵≫は必ず起こる。
もし、≪
この最下層次元に来ることなく、どこかの高みからこの≪
過程ではない。
この
ガイア神の創り出した地球において、俺が人の子として生まれ育った記憶を消し去ることに何の意味があるのかはわからない。
元の世界に戻る意思を
被害が拡大する前に、アヴェロエスを消滅させる。
この愛すべき世界を守るのだ。
クロードは、火神業の≪
圧縮され、高密度な≪神力≫の塊であるその身を火の心象を宿した≪
ベースは人型でありながら、揺らめく白い炎そのもの。
人型なのはその方が動かしやすいからであり、自分がそう望んでいるせいか自然とこの姿に落ち着いた。
その神々しい炎の化身のような姿に、エルヴィーラたちが感嘆の声を上げた。
『二人とも万が一の場合は頼むぞ』
クロードの≪念波≫に、二人はようやく我に返り、頷く。
≪
次の瞬間、目もくらむ様な閃光と共に幾万の魔物の集合体のようであった球体は爆ぜ、一片の肉塊も残さず燃え尽きた。
一瞬、ほんの一瞬のことだった。
おぞましい姿をした巨大な何かがあったその空間はぽっかりと空いてしまっていて、今はただ、大地に開いた大穴がその下にあるばかりだった。
延焼などはない。
燃やし尽くすべき存在だけを瞬時に焼失させ、そして白い炎は消えた。
その大穴の深淵を見下ろすクロードの身に、恐らく人の身では耐えられないであろう膨大な情報の
予想した通り、膨大な数の≪
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