第374話 十三番目の機械神
≪
同様に難しい顔をしていたので二人とも反対だとおもったのだが、エルヴィーラは、≪
エルヴィーラによると、≪
排除するにせよ、しないにせよ、いずれは現存する全ての機械神はその活動限界から停止してしまう。
そのことにより予測される人類の混乱を考えれば、時を置かずして一律運用停止させてしまうのも悪くはないと私見を述べてくれた。
≪
各大陸に二体ずつ配置され、その大陸にする亜人を含めた人種の≪恩寵≫管理と魔物の個体数調整を行っているらしい。
その十二体の停止時期がそれぞれ最大で数百年単位でずれていることで、長期間まったく≪恩寵≫を得られない地域とそうでない地域の間に大きな格差が生じ、そのことを理由として支配、非支配の力関係が生じてしまったり、一方的な虐殺などが生じてしまう可能性も十分あるのではないかとエルヴィーラは危惧していたらしいのだ。
だが、個人的な感情としては、創世神たるルオ・ノタルの最後の痕跡である≪
一方のオディロンは完全に反対する立場であった。
この異世界に生まれた者にとって、≪恩寵≫とは神の存在を感じることができる限られた機会であり、もしそれが発生しなくなったら、大きな喪失感と不安に全人類が包まれるに違いないということだった。
ごく自然に≪
クロードにとって未知の情報ばかりであり、二人の話を聞いてみて良かったと思ったが、事実を知ったことによって増えた悩みもあった。
十二体あるという≪
しかもそれが同時にではないという問題が浮上したのだ。
クロードには決してわからない異世界人たちの≪恩寵≫の捉え方からも、簡単に排除するか否かを決めるのが難しくなってしまった。
「オディロン、お前の言い分は分かった。どのようにするのが最善なのかもう少し考えてみよう思う。その、≪
「わかります。今お見せしましょう」
そういうと、オディロンは自らのデスクに戻り、そこに設置されたコンソールを操作し始めた。
この灰色がかった銀髪のエルフは、この異世界の文化レベルでは到底ありえないような、この≪箱舟≫内の機器の操作に随分と習熟しているようだ。
話を聞くと、この広い制御室に所狭しと置かれている機器の全てを助手とみられる若い青年エルフと二人で管理しているそうで、その知識はエルヴィーラから学んだものだそうだ。
もう少し人数を増やすわけにはいかないのかと内心余計な心配をしてしまったが、彼らにしかわからない何か事情があるのだろう。
この制御室で最も大きなモニタに世界全体を表した地図が現れる。
その世界の姿は六つの大陸からなり、ルオ・ノタルが故郷である第八天にある地球をイメージして作ったのが推測できるような形状をしていた。
地図上の赤く発光しているポイントが≪
「……どういうことだ。いつから、こうなっていたんだ?」
オディロンは左手で口元を覆う様にして、モニタを睨んでいた。
その整った顔には困惑と驚きが入り混じったような複雑な感情が浮かんでいた。
「 オディロン、どうしたというのです?」
エルヴィーラもオディロンの様子にただならぬものを感じたようだ。
「エルヴィーラ様、お気づきになりませんか? 見てください。≪
「確かに十三……」
エルヴィーラもオディロンも画面に目を奪われたまま固まってしまっている。
「俺にもわかるように説明してくれないか。十三あると何が問題なんだ?」
「ルオ・ノタル様が創造した≪
「数え間違っていたということは無いのか」
「クロード様、それはありえません。このことはルオ・ノタル様もこの制御室でともに確認されており、その際に設定の確認と再調整も行いましたので確かです」
「機械ならば、誤作動ということは考えられないのか?」
「≪
ルオ・ノタル以外の≪神力≫を持つ何者かとは一体?
光の九柱神、またはこの異世界外から訪れた漂流神の類であろうか。
旧文明で廃棄された≪
光の九柱神が、ルオ・ノタルの意に反して勝手な行動をとることは考えにくいし、漂流神の仕業であるというのが一番つじつまが合う気がした。
あとは、デミューゴスの仕業であるということも考えられるか。
「オディロン、正規に起動している十二機以外のもう一つを表す地点はどこだ」
クロードの問いかけに、オディロンが指し示した地点は、魔境域北西部だった。
「近いな……」
鬼人族の国≪オーグラン≫にほど近い場所で、その辺りは手付かずの森林地帯になっていたはずだった。
ここでふと、あることに気付いた。
恩寵後に脳裏に浮かぶようになったあの音声とイメージからなるあのメッセージ。
『ステータスに重大な異常を検出。精密検査と軌道修正のための修復が必要です。指定場所に向かい、必要な処置を受けてください』
あのメッセージが行けと伝えてきた場所がちょうどこの辺りではなかったか。
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