第331話 神々の統一

この≪世界≫の創世神たるルオ・ノタルと≪光の九柱神≫はクロードによって取り込まれ、はかりごと欺瞞ぎまんをもって、混沌を生み出していたデミューゴスも異空間に消えた。


このルオ・ノタルの≪世界≫には、純然たる≪神≫と呼べる存在はもはや無く、あとはこの≪世界≫の外から流れ着いてきた漂流神たちがいるだけとなった。


上位次元、あるいは同次元の別の≪世界≫から流れ着いてきたこれらの漂流神は、その力の源たる信徒と自らが創出した≪世界≫を失い、本来の力を発揮できないばかりか、その存在の維持すら危うい状態であり、今のクロードにとっては脅威とはなりえない。


まさしく、この≪世界≫における神々の勢力図を、クロードが統一したと言っても過言ではない状態になった。


≪亜神同化≫あるいは≪神喰≫のスキルによって取り込まれた神々は、クロードの中で解け合い、混ざり合って、やがて大元おおもととなるクロード自身の力に取り込まれ一つになった。


ルオ・ノタルの全ての力を手にした今のクロードにはこの≪世界≫の状態が手に取るように把握できる。


創世神を失い、この≪世界≫の管理者たる≪光の九柱神≫がいなくなっても、やはりこの≪世界≫の運行には何らの支障もないようだった。


≪光の九柱神≫が生み出した無数の精霊たちとそれを統べる精霊王たちによって生み出されたエネルギーが、この≪世界≫を余すことなく巡っている。


やはり、≪神≫は≪世界≫を創造し、その営みの仕組みを造り出した時点でそのほとんどの役割を終えているのだとクロードは思った。



さて、エーレンフリートをイシュリーン城に連れ帰り、クローデン王国軍との戦を終わらせなければならない。


クロードがそう思った瞬間、突如として周囲の音が止んだ。

いや、音だけではない。

風も雲も、空気中に舞う塵芥でさえも動きを止めた。


クロードを除く、全ての時の運行が止まったのだ。


何事が起きたのかと周囲を見渡し、天を仰ぐ。



この≪世界≫の遥か外側の宇宙から、太く力強い光の柱が降りてきた。

光の柱の周りには眩い光に包まれたおびただしい数の羽の生えた人のような何かが螺旋を描いて旋回している。


『クロード、≪≫が訪れたわ』


ふと気が付くと、傍らに白い花冠の少女が立っていて、クロードの手を握りしめてきた。

白い花冠の少女は、かつて≪三界≫で出会ったルオだった。

はじめて会った時はまだ只の人間であったせいかわからなかったが、≪神力≫を微かに感じる。

だが、それは儚げで、握る手にほんの少し力を加えたなら消えて無くなってしまいそうな危うさがあった。


「ルオ、≪≫とは一体?」


『大丈夫。全てが上手くいくわ』


ルオはクロードの顔を見上げると、輝くような笑顔を浮かべた。



やがて、光の柱からその光よりもまばゆく輝く何者かが降りてきた。


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