第323話 共通の願い
九柱の光の神々の内、天空神ロサリアは俺に取り込まれ、夜と月星の神ヌーヴュスと知恵と学問の神ウエレートはデミューゴスに喰われたという話だ。
大地神ドゥハーク。
水神ヤーム。
火神アハタル。
風神セラン。
戦神バラン。
獣神ヴォルンガ。
残る六柱の神は取り込んだルオ・ノタルを通じて感じる縁とその外見的特徴から、この場にいる六体で間違いなさそうである。
「ルオ・ノタルが生み出した九柱の神の残り全てが一堂に会して、俺に何の用だ?」
クロードが周囲を取り囲む六柱神に問いかけたが、すぐに応えは無かった。
『俺はこのクロードと雌雄を決したい。か弱き人間の肉体という制約抜きに誰の邪魔もなく一対一で!』
最初に口火を切ったのは戦神バランだった。
例えが適切かはわからないが巨大なイガ栗のような形をしており、その棘に当たる部分が何某らかの武器でできているといった外見であった。
剣、刀、槍、槌……名称がわからない武器もある。
『また始まったか。お前には勝ち負けしかないのか。バランよ、少し黙っておれ』
大地神ドゥハークが巨体を揺すりながら笑って言う。
『私たち六神は皆、考え方も違えば貴方に対する評価も異なる。九柱神の主神たるロサリアがいなくなり、統率もとれぬ有様。それでも貴方に
無色透明だが、帯びた≪神力≫で辛うじて人型であるとわかる風神セランが目の前にやって来た。
『私は貴方と会って見定めたかった。ルオ・ノタル様とロサリアが本当に消滅してしまったのか、それとも貴方という器の中で今なお生き永らえておられるのかを……』
正直言って、それは俺も知りたいところであった。
≪亜神同化≫の詳しい作用はわかっていないし、物事の考え方や性格に取り込んできた神々の何らかの影響を受けているような自覚が無いわけでもない。
『しかし、貴方にこうして直に会い、話をしてみて確信しました。ルオ・ノタル様たちはもう存在しない。ここにいるのは二神の力を得た別の存在。私の希望はルオ・ノタル様とロサリアの≪神核≫の返還を交渉することでしたが、あなたから感じる≪神核≫は一つ。貴方から二神の名残は感じますが、あなたの人格はルオ・ノタル様でもロサリアでもない』
「それを聞いて少し安心した。ルオ・ノタルもロサリアもその存在を取り込んでしまったのは俺の本意ではなかった。俺には俺の事情があったし、いずれの時も自ら望んでのことではない」
『ルオ・ノタル様は≪神核≫を深く傷つけられ、いつ消滅してもおかしくない状態でしたので、覚悟はしておりました。ルオ・ノタル様がもはや存在せぬことが確信できた今、改めて貴方に問います。貴方はこの後の≪世界≫をどうなさるおつもりですか?』
六神の視線がにわかに真剣味を増す。
「どうするつもりもない。俺は≪世界≫に自ら干渉する気はない。人として生き、人として死ぬ。≪異界渡り≫は年を取らないようだから、死ぬことが叶うかはわからないが、それは後で考えようと思っている」
『それだけの力を持ちながら何もしないと?』
「この力は、≪世界≫から人類に干渉しようとしてくる神々を駆逐するために使う。俺が理想とする≪世界≫は神々の思い付きや気まぐれで人類が
『馬鹿な! ≪世界≫のことを下等な人類たちの為すがままにするというのか?奴らは欲のままに繁殖し、信仰による≪神力≫を生み出すだけのただの道具だ。やはりこのような男に≪世界≫を託すなどできぬ相談だ』
水神ヤームは黙っていられないとばかりに、風神セランとの会話に割り込んできた。
もういい。
こいつらの考えはだいたい分かった。
地上の戦争も収集しなければならないし、早く決着をつけてしまおう。
「どうやら互いに相容れない考えのようだ。お前たちも六神勢ぞろいできてるんだ。決着をつけよう」
クロードは≪
戦神バランが辛うじて動きかけたが大地神ドゥハークがその大きな手で制止してしまった。
『決着は既に付いておる。儂らには高位次元神たるそなたの≪神核≫を破壊することはおろか傷一つ付けることすら出来んのだ。
大地神ドゥハークは土砂でできたその大きな顔に何とも言えない悲しげな表情を浮かべて言った。
その様子に奮い起こそうとした戦意が萎えてしまう。
勝算が無いのに、わざわざ人界の争いに加担し、ここに集ったというのか。
一旦何のためにこのようなことをしたのか、全く意図がつかめない。
今度は火神アハタルが前に出てきた。
『異世界より来たる高位次元神……、いやあえてクロードと呼ぼう。クロード、もう一度考え直してはくれぬか。我らの考えを受け入れ、この≪世界≫の真なる≪神≫になってくれ。人類は愚かだ。ましてや人族に至る過程で生み出された亜人どもなどもっての
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