第287話 圧
魔物たちはバ・アハル・ヒモートの背から突き出した≪
全身が魚類のような鱗に包まれた怪人が背後から羽交い絞めにしようとその太い腕で首を絞めつけてきたが、クロードをひるませるような力には程遠かった。
問題は魔物たちではない。
沈みゆくほどに大きくなる水圧だった。
バ・アハル・ヒモートの外皮やしがみついている≪
クロードの身体にしがみついていた魔物も気が付くとぐったりとなって体から離れていっていた。
他の魔物たちも水圧に耐えられなかったのか、同様に脱力した様子でクロードの頭上を漂っていた。
水中であれば、正攻法でバ・アハル・ヒモートを倒したとしても体内にため込まれた原子魔導炉のエネルギーの影響を地上が受けにくいのではないかと思って、この深海に誘い込んだのだが、完全に考えが甘かった。
この水圧では戦闘どころでは無い。
バ・アハル・ヒモートも苦し紛れに魔物を放ったが、ご覧の通りだ。
ただ
未だ海底は見えず、ここが水深何メートルであるのかもわからない。
照明代わりの発光体があるはずなのだが、次第に視界が暗くなってきたように感じる。
突然、呼吸の限界が来た。
肉体の条件反射で脳がパニックを起こした。
体の制御が聞かず、肺の中に海水が侵入してくる。
肛門が弛緩し、冷たい液体が侵入してくるのを感じ、
もうここから先は天地が逆転したような混沌とした状況に陥り、何も考える余裕がなくなった。
手足の感覚がなくなり、それが全身に広がる。
ああ、あれは俺の肉体だ。
剣の柄を手放し、酷い形相で弛緩した俺が漂っている。
肉体の死を実感するとともに、内側から
この状態になってみると実感するが人としての肉体はまさに檻だ。
感覚を通して得られる生の実感と喜びを引き換えに窮屈で、不自由を強いられる。
重力も浮力も水圧からさえも解き放たれ、周囲の状況を把握することができた。
死を重ね、この状態になる回数が増すほどにだんだん勝手がわかってきた。
自我を持った≪神力≫の塊である己を人型に保つことも可能であるし、そうすることで、人間の肉体を持っていた時に得た経験を生かしやすくなることも実感として理解できた。
火の神は炎。
石の神は石。
神々がとる二つの形態には≪
クロードは人間であった時の姿形をイメージし、それを固定する。
バ・アハル・ヒモートは外部からの圧力で随分と小さくなってしまったように見えた。
≪
バ・アハル・ヒモートのすっかり
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