第285話 祖父母

落下の勢いそのままに海中に飛び込む。


まさか、ここで「祖父母の名前」の記憶と引き換えで得たスキル≪水泳LV5≫が役に立つとは思わなかった。


水平に泳ぐことだけでなく、潜水技術にも効果があるらしく、体がスムーズに海底に向かうことができる様な体の使い方が身に付いていた。

耳抜きも自然にできた。


素潜りなどやったことはなかったが、足の重さで沈んでいく力に己のひと掻きを乗せて、先行して沈下していくバ・アハル・ヒモートを追う。


あと少しで≪機械神ゲームマスター≫の頭に触れるというところで、脳内に膨大な数の文字列が浮かんできた。


恩寵レベルアップ≫だ。


先ほど地上で倒した魔物の分の≪経験点≫が加算してしまっていたようだった。

ただ魔物を生産する能力を有しているだけでなく、≪機械神ゲームマスター≫としての≪経験点≫を付与する役割の名残があるのか。



名前:クロード

恩寵:12→14

種族:識別不能

神格値:1(9)

神力 : 438(13884)


筋力 - 283→342

敏捷力 -283→342

耐久力 - 283→342

知覚 - 283→342

魔力 - 517→82(626)

魅力 - 38

≪スキル≫

異世界間不等価変換(ガイア→ルオ・ノタル)、頑健LV5、五感強化LV5、多種族言語理解LV5、危険察知LV5、馬術LV1、投擲LV5、魔力感知LV3、古代言語理解LV5、毒耐性LV5、剣術LV3、魔力操作LV3、精神防御LV5、狼爪拳LV2、政務LV1、手加減LV1、水泳LV5

≪EXスキル≫

異次元干渉、亜神同化、次元回廊 、自己再生

≪御業≫

創世神業 - 肉獄封縛により使用不可

火神業 - 発火、火炎操作、物質創造、神火

石神業 - 岩石操作、岩石創造、部分鉱石化

天空神業 - 発光、光操作、天候操作、神雷、飛翔、物質創造、姿形変化、天空視


潜水中なので、じっくり吟味する余裕がない。


しかも一度に二つもレベルアップしてしまった。


『二段階レベルアップを確認しました。異世界間不等価変換を開始します。変換に使用する記憶を60秒以内に二つ選んでください』


①母親の存在

②父親の存在

③祖父母の存在

④家族、祖父母以外のすべての親族の存在


以前、一度に三回分の≪恩寵≫が発生したことがあったが、あの時とは異なり、今回は引き換えになる記憶がすべてそれぞれの存在に絡むものばかりだった。


①、②、③はどれを選べと言われても選び難いし、④などは一度に消える人数が多いので記憶全体に与える影響が心配になる。


選んだ選択肢の人物とそれに絡む思い出の一切が、おそらく自覚もないままに完全に消え去る。


その人物がいなくても矛盾が起きないように思い出が改変されたり、初めからいなかったことにされてしまう可能性がある。


残り二十秒切った。


機械神ゲームマスター≫の首の付け根に≪神鋼しんこうの剣≫を突き刺し、しがみ付く。


酸素が不足しているのか、思考がまとまらない。


自動的に消去する記憶が選ばれてしまうのを避けるためにも、とりあえず選ばなくては……。


あまり親戚付き合いが盛んでなかったこともあり、④「家族、祖父母以外のすべての親族の存在」はそれほど抵抗が大きくはないが、③「祖父母の存在」はどうしても踏ん切りがつかない。

もはや、名前を思い出すこともできないが、小さい頃たくさん遊んでもらった記憶が多くある。

祖父のしわだらけの大きい手。柔和な笑顔。

夏休みに泊まりに行ったときに、甘えて潜りこんだ祖母の布団の温かさ。

両親からは決して買って貰うことができないような高価なおもちゃの数々。


両親と祖父母。

本来であれば天秤になどできるはずがない。


ぎりぎりの時間まで迷った。


仕方ない。


今回は③と④だ。


『選択された二つの記憶を変換します』


『「祖父母の存在」はスキル≪異空間収納≫に変換されました』


『「家族、祖父母以外のすべての親族の存在」はスキル≪鑑定眼(全技能)≫に変換されました』


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