第260話 茫然
アヌピア都市遺跡にはクロードの持つEXスキル≪次元回廊≫を使って行くことをエドラ、カイティ、ガネットの三人に説明したが、反応はいまいちだった。
そのようなスキルは耳にしたことがないとか、何を言っているかわからないといった言葉が返ってきて、随分と戸惑っているようであった。
論より証拠ということで、実際にやって見せることにする。
クロードは、オルフィリアが情報収集により作成した地図を頼りに≪
テーオドーアの治める岩山の里から
上空から見た感じだと建物の数は、三千戸ほどはあるだろうか。
都市跡はごつごつとした岩山を背に、その外周は半月形の城壁のようなものに囲まれている。
「あったぞ」
クロードの言葉に、オルフィリアだけが歓声を上げる。
他の三人は怪訝な顔をしたままだ。
クロードは≪次元回廊≫の出口を、≪
入口は、荷馬車が通る大きさにしなければならないので、開口を普段よりも大きくした。
「おいおい、なんだこれは。どうなっているんだ。オルフィリア、大丈夫なんだろうな」
突如現れた≪次元回廊≫の入口に、『背を追う者たち』の三人が目を丸くする。
時間がもったいないので荷馬車の御者に先に行くように言うと、「へいっ」と短く返事をして、荷馬車ごと≪次元回廊≫の入口の中に消えていった。
この御者はクロード・ミーア共同商会で物資の輸送を担当をしていた元家畜人間であったので≪次元回廊≫にはもうすでに慣れっこになっていたのだ。
「さあ、みんな、行くわよ。大丈夫だから、ほらっ」
オルフィリアに追い立てられるようにして、エドラたちも恐る恐る≪次元回廊≫の入口を通っていった。
≪次元回廊≫から出た先はアヌピア都市遺跡と思われる廃墟群の朽ちた城門の前であった。延々と続く城壁の途切れ目のような場所で、その先に都市の通りの面影があった。
城壁が存在するということは、侵入を
先に到着した者たちも同様であったのか、立ち尽くし、都市の方を向いたまま固まってしまっている。
荷馬車の御者はクロードの元に駆け寄り、チップを受け取ると頭を下げ、再び≪次元回廊≫の出入口の中に消えていった。
クロードはその姿を見送ると出入口を閉じ、オルフィリアのもとに歩み寄る。
「どうだ、オルフィリア。アヌピア都市遺跡で間違いなさそうか」
「少し調べてみなければわからないけど、クロードが私の地図通りの場所に送ってくれたのであれば、間違いなさそうね。これだけの規模の都市遺跡であればそうあるものじゃないわ」
嬉しそうなオルフィリアとは対照的に、エドラ、カイティ、ガネットはまだ茫然と二人のやり取りを黙って見つめていた。
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