第254話 結論
この世界の剣は、両刃で直刀。
刀身は肉厚で重量がある。
製造方法も比較的単純であるらしく、そうであるがゆえに職人の技量による差が出やすいらしい。
中央にフラーと呼ばれる溝を施したり、独自の研ぎの技法が有ったりとそれらは大抵秘中の秘となっており、師弟の間でもおいそれと教わったりは出来ないものなのだそうだ。
クロードは加熱が必要な工程の終わりを見届けるとあとは稀代の名工であるバイゼルにすべてを託し、イシュリーン城に戻ることにした。
そろそろゲイツの引っ越しも一段落したころであろうし、話を聞くのもいい頃合いだと思った。
城に移送してすぐに尋問することも考えないではなかったが、こちらがデミューゴスに関する情報を欲しがっていると足元を見られるのを避けたかったので、あえて間を置いた。
ゲイツにあてがった部屋を訪れると、≪神の丘≫の研究施設から運び入れた
ゲイツは片付け作業の途中だったようだが、クロードの訪問に気が付くと、手を止め部屋に招き入れてくれた。
「どうやらあまり片付けが進んでいないようですね。誰か手伝う人間を寄こしましょうか?」
「いや、気持ちだけありがたく受け取っておこう。素人にはこの資料の分類は無理だ。それより研究施設はどうなった?」
当たり障りのない雑談を
「あの地下施設は、必要なものを持ち出した後、破壊しました。機械類も要望があったもの以外は、解体して資源として活用させてもらうつもりです」
「そうか、勿体ないな。あれだけの施設を造り上げるのにどれだけの手間と時間がかかると思っているのか。科学的な知識があってもこの文明レベルと限られた資源では途方もない苦労があるのだが……」
ゲイツは心底
悪用されるよりは破壊する。
これがクロードの下した結論だった。
「それで、魔石人間たちはどうなった?」
「リタに預けました。彼女のスキル≪
「そうか」
ゲイツは短くそう言うと、
表情が
ただ、先日の心境の
こうしてみると本当に小柄な老人だ。
自衛のための力もなく、この異世界で生きていくためには様々な苦労があったのかもしれない。
自分もこの異世界に来たばかりの時に、見慣れぬ景色と夜の森の暗さに言いようのない孤独と不安に押しつぶされそうな気持になったが、それを救ってくれたのがオルフィリアだった。
もしゲイツも最初に出会ったのがデミューゴスたちでなかったのなら違う生き方ができたのかもしれないとふと思った。
しばしの沈黙が続く。
「デミューゴスについて知りたいのだろう。私が知っていることを話そう。魔石人間たちにしたこと以上の私の
ゲイツは染みと皺の目立つ顔を涙で濡らし、震える声で言った。
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