第195話 多種族混成
まだ国名すら定めず、実態が希薄だったクロードが治める人族の国は、人族、闇エルフ族、闇ドワーフ族、ドワーフ族、夜魔族、竜人族、猫尾族などからなる多種族混成国家に急激な変貌を遂げた。
元家畜人間の人族は、五百人ほどだったので、実質は移民であるラジャナタンの国と言っても過言ではなかったが、他の種族たちを加え、八千人近い人口になったので単独の国としてもそれなりの体裁を整えなくてはならなくなってしまった。
国名についてはリタが王であるクロードの名前から、新クローデン王国はどうかという意見を出したが国際問題に発展してしまうこと間違いなしだったので、これを却下し、構成種族の主だった者たちや周囲の者たちに広く意見を求めた。
国名一つと言えども考え始めるとなかなか難しく、各種族の意見をバランスよく取り入れるとなるとなかなか決まらず、結局ある程度絞った候補の中からクロードが決めることになった。
クロードとしては特にこだわりがなかったのでむしろ決めてもらった方が助かると思っていたのだが、周囲の強い説得もあり最終決定をする羽目になった。
出された候補は次の通りだった。
神聖クロード王国、クローディッシュランド、ゴントランド≪隠された国≫、魔境国、マンランド≪人族の国≫、アウラディア≪全ての者の安住地≫、ヴァールドランド≪森の国≫、クロード聖王国。
自分がいなくなっても存続していけるように自分の名前が入った国名は避けたかった。この国に住む者たちに親しみと誇りを持ってもらえるような国名。
数ある候補の中からクロードが選んだのは、アウラディア≪全ての者の安住地≫だった。
ヴァールドランド≪森の国≫との二つでかなり悩んだが、語感と響きでアウラディアの方が勝っていると感じられたのでこれに決めた。
後から聞いた話では、この国名案を考えたのは、オルフィリアだったようだ。≪森の民の言葉≫をもとにした造語で、今の様々な種族が暮らせる国が永く続くことを願って発案してくれたらしい。
この≪全ての者の安住地≫という込められた意味が皆にも響いたのか、反対する者はなく、こうしてクロードは、ミッドランド連合王国の王にして、その構成国であるアウラディアの王となったのだった。
各種族の族長を招集し、もうすでに十一回目を数える「多種族族長会議」でこのアウラディアの建国を知らせ、連合王国内で起こった様々な変化に応じた体制の変化について議論することになった。
建国することを放棄した種族が多く出たため、ミッドランド連合王国の構成国は、狼頭族の国≪ウルフェン≫、鳥人族の国≪ヒ・メル≫、鬼人族の国≪オーグラン≫、闇ホビット族の国≪グラスランド≫、そしてクロードの治める≪アウラディア≫の五カ国になった。
ミッドランド連合王国の王は、この五カ国の王の中から選出することにし、「多種族族長会議」の役割も五カ国の王からなる「諸王会議」に移行されることになった。
この後はミッドランド連合王国の定めた盟約と規律を共有しつつも、各国の国政に専念し、共通の懸案事項や危機が生じた場合を除けば、年に一回の「諸王会議」でその連帯を確かめていくこととなる。
「王の交代」についても必要があればこの場で発議され、変更がなされれば新たな王の治める国の首都が、ミッドランド連合王国の首都も兼ねることとなる。
もっともこの五カ国の現時点での国力は≪アウラディア≫が突出しすぎているので、「王の交代」を発議される可能性が低く、各国の対等な立場での協調と共生という当初の理念は形骸化してしまった節もある。
他の四カ国が軌道に乗り、肩を並べるまではどうしても発言力に格差が生じてしまう。
≪アウラディア≫の意向に忖度した政策を取らないように、過度の干渉は控えつつも、間違った方向に行かぬように見守る必要があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます