第144話 生後二年

ああ、やはり来たか。恩寵だ。

相次ぐ連戦で、そろそろ発生するのではないかと覚悟はしていた。


次の場所に向かう途中で、クロードの脳裏に膨大な文字列が途中で捻じれながら降りてくるようなイメージが浮かび、立ち止まった。


≪異界渡り≫を殺してもこの世界の生物や魔物に付与されている特殊な経験点を得られないというリタの話だったが、マヌード分裂体と同時にオーク兵八人も殺めてしまったので、連戦の実体験的な経験値にさらに特殊経験点とやらが加算されて、恩寵が発生してしまったようだ。


名前:クロード

恩寵:10→11

種族:魔人(ガイア)

筋力 - 235→258

敏捷力 -235→258

耐久力 - 235→258

知覚 - 235→258

魔力 - 428→470

魅力 - 35

≪スキル≫

異世界間不等価変換(ガイア→ルオ・ノタル)、頑健LV5、五感強化LV5、多種族言語理解LV5、危険察知LV5、馬術LV1、投擲LV5、魔力感知LV3、古代言語理解LV5、毒耐性LV5、剣術LV3、魔力操作LV2、精神防御LV5、狼爪拳LV1

≪EXスキル≫

異次元干渉、亜神同化、次元回廊



こうしてみると能力値も最初に確認したころに比べて二倍以上高くなった。

この数値が人間離れしているということを最近ようやく実感し始めたが、それと同時に普通の人間だった自分が別の化け物に変貌してしまったかのように思えてきて少し怖い気がしている。

剣術や魔力操作など使う機会が多いスキルが上がっていたのは正直嬉しかった。狼爪拳なども暇を見てコツコツ、型を練習しているが、新しい技術を習得するのはやはり楽しい。


だが、問題は次だ。

今回はどの記憶を失うことになるのだろう。



『レベルアップを確認しました。異世界間不等価変換を開始します。変換に使用する記憶を60秒以内に選んでください』


相変わらず感情感じない機械的な女性の音声が脳内に響く。


①母親の存在

②父親の存在

③0歳時の記憶

④18歳時の記憶


順番こそ違えど、また父母の存在の消去が選ばれている。

やはり何らかの意思を感じる。

選択肢に登場する頻度が高すぎる。

完全なランダムではないのではないか。


それに今回はどれも選び難い選択肢ばかりだ。

逃げ場がない。

もう1歳時の記憶を失ってしまったので、③の0歳時の記憶を選んでしまった場合、生まれてから二年間の記憶を失ってしまうことになる。

思い出そうとして、思い出せる記憶は特にないが本当に影響がないのだろうか。

1歳時の記憶を失った時は、前後で変化はなかったように思われたが、影響を受けていたとしても自分では自覚できないことが恐ろしい。


④は今でもある程度はっきりと思い出せる記憶が多い。

失った場合の影響は計り知れないと思う。

十八歳といえば高校最後の年にあたるし、大学入試に、部活。俺の人生で最も努力した年齢だったと思う。


結局は消去法で選ばされる形で③だ。


選択の自由があるようでない。


『0歳時の記憶を変換します。「0歳時の記憶」はスキル≪自己再生≫に変換されました』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る