第五章 異世界探索

第121話 大規模調査団

善は急げということで、早速マテラ渓谷の遺跡群を調査するためのチームが組織されることになった。


当初、クロード、オルフィリア、オロフ、エーレンフリート、ユーリアの五人で偵察に行くつもりであったが、オーク族のヅォンガがしつこく懇願するので同行を許したところ、配下の兵士五人、人夫二十人も連れてきたので、大所帯になってしまった。

オーク族の人夫たちは、ヅォンガの指示で大規模な野営道具、大量の食糧、硬貨を詰める袋、家畜人間たちに餌をやるときに使っていたという車輪がついた木製の荷車などを運んできており、先遣隊のつもりが、大規模な調査団になってしまった。


「ヅォンガの奴は、闇エルフ族ばかり重用されていると不満を口にしているという話が私の耳にも届いております。きっと手柄に飢えているのでしょう。ここは奴にも活躍の機会を与える意味で、やりたいようにやらせておくのが良いでしょう」というのは、オイゲン老の言葉だった。


事実、ヅォンガはとても張り切っており、「闇エルフ族ばかりが、陛下の家臣ではないことを証明して見せますぞ」と鼻息を荒くしている。


そんなヅォンガの様子をオロフは冷静な目で見ており、「ヅォンガ、やる気が空回りして、失態を演じることがないようにな」と釘を刺していた。


そして、決行当日、自ら志願して同行を申し出た人物がもう一人いた。

紅炎竜レーウィスである。

全身を分厚い毛皮の防寒着で覆い、背中に大剣を背負って現れた。


「決して暇なわけではないぞ。古代の遺跡群がどのようなものか興味が湧いたのだ。クロード王、同行しても問題なかろう? 」


おそらく本当に暇なのだろう。最初は、物珍しそうに城下の様々な種族の集落を見物していたようだが、一通り見終わると、やることがなくなったのか、最近は城のあちこちで見かけるようになった。


調査団の面子を見て、当初考えていた遺跡群の探索とだいぶ様相が変わってしまったが、発見した財物をすぐに城に運べるのはたしかに合理的であるし、レーウィスについても、今は≪人化の法≫で人の姿をしているが最強生物の呼び声高き竜である。他のメンバーに後れを取ることは無いだろう。



こうして大所帯になってしまった調査団だが、イシュリーン城の屋上から≪次元回廊≫を通って、直接遺跡群の手前付近に移動させることにした。

オイゲン老が当時の記憶をもとに大体の場所伝え、≪五感強化≫のスキルにより最大限の視力で確認したところ、凍りついた湖面の先にマテラ渓谷の岩壁を確認できたので、そこに出口を設定して、≪次元回廊≫の入り口を出現させた。


≪次元回廊≫をここまで何度か使ってみて、だいぶ要領をつかめてきたのか、入口の大きさや形をある程度自由にできることに気が付いた。

今回は荷物の搬入があるので、入口の横幅を少し広くした。

魔力の消費についても、目視でいける範囲であれば、何往復かするぐらいの余裕はあるようだ。≪次元回廊≫を出現させるときの消費量に比べると、それを維持するための魔力はそれほど大きくはないので、今回の調査団くらいの人数であれば、全員を移動させる間、回廊を保持することは可能だった。


クロードは、オロフとエーレンフリートを先行させ、出口付近の安全を確認させると、全員を移動させ、最後に自分が次元回廊の入り口に飛び込んだ。

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