第27話 襲撃
ノトンの町を発って三日目のことだった。
クロードが感じていた様子を窺うような気配は二つになった。
左手側に広がる丘陵地帯からが一つ、そしてもう一つがはるか後方だった。
アイバンやオルフィリアは何も感じてはいないらしいが、クロードには確かな実感があった。それがスキル≪危機察知≫によるものかはわからなかったが、気にしないようにしても脳裏に浮かび上がってくるのだ。
この二つの気配に変化があったのは、レーム商会一行がその日の野営予定地に考えていた休息場に向かう途中のことであった。
太陽はかなり低い位置まで落ちてきており、周りの風景が赤みがかってきていた。
左手側の丘陵地帯から感じられていたこちらを窺っていた気配が前方の気配と接近したかと思うとまた後方の方に回り込み、もう一つの気配と合流したのだ。
そして、あたかも信号機が黄色から赤に変わるように、気配から明確な敵意を感じるようになった。敵意は感じるが脅威は感じない。
はるか前方にも敵意をはらんだ気配が五つ。
「アルバンさん、何か危険が近づいている」
クロードはようやく覚えたばかりの速歩で先頭を行くアルバンの元に告げに行く。
「俺の目にはまだ何も見えないが確かなのか」
地形は緩やかな起伏があり、街道は大きく左に曲がっている。
その先は左手側の森林が邪魔をして窺い知ることができない。
「後方に二つ。そして前方に五つの悪意を感じる。後方の二つは少しずつ距離を詰めてきている。前方の五つはほとんど動いていない」
アルバンはクロードの顔をじっと見つめると、ヘルマンに荷馬車を止めるように言った。
アルバンは、オルフィリアとクロードに荷馬車を離れるなと告げると馬首を翻した。今まで進んできた来た道をはるか後方に向かって、馬を走らせた。
アルバンの背中はどんどん小さくなり、それからしばらくして戻ってきたアルバンの手には弓が握られていた。
「クロードの話は本当だった。野盗だ。確認しようとして近づいたら、矢を放ってきやがった。おそらく、この先の曲がり道の先で待ち伏せている。挟み撃ちにする算段だったのだろう。後方の二人は始末した」
アルバンは息一つ乱してはいない。冷静そのものだった。
確かに後方で悪意を放っていた気配が二つ消えている。
感じ取れている気配の数が人数だとすると、あと五人。
「荷馬車はここで待機。積み荷を守るのが最優先だ。危険を排除してから悠々進むとしよう。奴らは待ち伏せていたつもりだろうが、クロードのおかげで先に気付くことができた。これは大きなアドバンテージだ」
アルバンは作戦を説明した。
荷馬車はこのままこの場で待機し、待ち伏せている連中が痺れを切らして様子を見に来たら、様子を見に来た敵を討つ。来なければ、アルバンとクロードで奇襲を仕掛け、危険を排除する。五人全員で近づいてきたときには荷馬車に近づかせないようにこちらも前に出ての戦闘になるだろう。
そして事が片付くまで、ヘルマン達には荷馬車の中に隠れていてもらう。
クロードとオルフィリアは無言で頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます