外伝2
私たちは毎日、仕事に行く前に我が子に会いにいく。
ナースセンターの前を横切ったところに部屋はある。
リリカを目の前にしたら、安楽死の事を見透かされたような気がしてバツが悪い。
それでも微かな異変がないかとどこかで期待をしながら我が子に目をむける。
これから先こんなことがいつまでつづくのだろう。やっぱりつらい。
涙が滲んでくる。私たちはリリカの前では泣かないと誓ったのに。
夫にトイレに行ってくると言って部屋を出る。
「リリカ、パパだよ」
事故にあった時は、もう一緒に死のうかと思った。だけど一命は取り留めたと聞いた時は世界中の神様に感謝してもし足りないくらいだった。
でも起き上がることも目をあけることも出来ない。
それでも生きていると言えるのかい?
そんなことを願うのはぜいたくなのですか?
目の前にいるのに、僕ができることは何もないのかい?
っうつ、ごめんよ。今日の僕たちは泣き虫だよね。
ふっと視線が、白くて細いリリカの手に止まった時に指が微かに動いた⁉
えっ、気のせいか?そう思った瞬間…視界がもやに包まれたようになった。
視界がはっきりすると、目の前のリリカが真ん丸のめをして、こちらをみていた。
えっ!!!っ
ええっ!!
二人とも、キツネにつままれたようだった。
やっと、口にした言葉は、お互いパパとリリカという言葉だった。
そして抱き合って喜んだ。泣きながら、鼻水だらけでお互いの温かさを感じながら。あれからどれぐらいの時間が経ったのだろうか。
徐々に今まで積もっていた、声にならないリリカへの想いが形になる。この時を俺たちは待っていたんだよ。リリカが目を開いて語りかけてくることを、いつもいつも…
リリカだって。いつもいつも朝は来るけどパパとママがいなくて寂しかったと、ポツンポツンと10歳のリリカは少しづつ話しだす。
トイレから帰ったママ
パパが、寝たようにリリカの上にかぶさっている。
「あなた、リリカが苦しいわよ。起きて」身体を揺するが起きる様子がない。疲れたのかしら。嫌な予感を感じながらナースコールを押す。
すぐさまナースがかけつけてくれて、そのあと当直医の若いきびきびした先生が身体チェックをした後検査室へ移され、狭い廊下で何時間も不安な気持ちで待っている。
これから、どうなるの?あなたも、リリカの所へ行ってしまったの?また、私は置いてきぼりなのね…。
しばらくして、周りがうす暗くなった。どうしたのかしら停電?!
嫌だわ。通路だけが、少し光って前方向にのびている。
取り残されたようで、不安になったので前方の扉を叩いてみる。
そこからは、声が漏れていた。なんだか聞き覚えがある声だわ。
そう懐かしくてかわいらしくていつもいつも、待っていた。
そしてもう一人はパパ?の声。
じれったくて確かめたくって、荒っぽく戸を開ける。
そこには、抱き合ってるパパとリリカがいた。
ああ、やっぱりそうだったのね。あなたたち、ずるいわ。
そして、近づいた私にリリカはママーって、満身の笑みを浮かべて胸に飛び込んできた。パパも、涙でぐしゃぐしゃで三人で、抱き合っていた。いつまでも、いつまでも…
ある朝 クースケ @kusuk
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