神様

「あのねえ!ごめんねえ!神様!分かればいいんだよ、わかれば!もう夜におはじきするのはやめようね!」


小さな声が、「はい」


「じゃさ!もうお休みしてね!明日また遊ぼう!」


小さな声が、「はい」


「神様!大好きだよ!」


「へへへ」と小さな声がやっと笑った。


「おやすみ!」


小さな声が「おやすみなさい」というと、町には突然静寂が訪れたのだ。


「すごいです」

「もう、冷や冷やだよ」

「神様と人間って、会話できるんだ」

「ね。そんなもんなんだね、神様」

「昆布さん、流石。明さんがプロポーズしただけある」

「それはもういいって。違うんだってばさ」

「私、昆布さんについていきます」

「あのね」


有髪髭もじゃにエプロン姿の田中が鍋を持って部屋に入ってきた。


「悪い。昆布、茶碗とか出してくれる?」

「おう」

「ねえ、ねえ。昆布さんがね、今」

「知ってる知ってる。聞いてた。こっちに来て早速、武勇伝だな」

「ははは。明日からよろしくお願いします。その、こっちのしきたりとか全然わかんない。どうせあっちには戻れないんだよね。いろいろ教えてください」

「おうおう。任しといて。みんなに紹介しないとな。それよりさ、昆布。あれ、飲みたくねえ?」

「何?」

「渡辺さんのマティーニ」

「あ。そっか。こっちに来てる」

「うん。神様が出鱈目にいろんなビルの階を重ねたんでね。今はこの階の上、4階にある「4階のマティーニ」。渡辺さんも住んでる」

「マジか。行きたい。でもゴージャスちゃん、飲めないよね。授乳中」

「私ならいいから、今夜は二人で行ってらっしゃいですよ。授乳期間終わったら連れてって」

「ごめんね」

「さて。その前に飯食おう」

「今日は御馳走になります」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

4階のマティーニ 味噌醤一郎 @misoshouichirou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ