最終話
1年後。
不思議なものだ。
20年近く苦しんだものが、いとも簡単に終わりを告げるものだったなんて。
......
「お父さん、見て見て!」
そこには、新しい学校の制服を着て笑っている、翠の姿があった。
今日は、翠が初めて高校に行く日だ。
「セーラー服、着てみたかったんだ!
うわぁぁ、かわいいっ!!」
彼女は、鏡を見て目を輝かせている。
あのあと、すぐにでも学校に行かせてやりたかったが、さすがに娘ひとりを育てるとなると、俺の収入では、すぐどうにかなるものではなかった。
とりあえず高校1年の勉強は教えてやりながら、なんとか翠が高校2年になるまでに、頑張って金を稼いだ。翠は、日中することがないのでバイトをすると言っていた。翠いわく、少しでも彼女の学費の足しにしてほしいそうだ。
よほど学校に行きたかったんだろうな。
この時ほど、真面目に勉強しておいてよかったと思ったことはない。
そしてついに、翠が2年生になる日が来た。
新しい学校で再スタートを切る。少しの不安はあったが、翠の笑顔がかき消してくれた。
「あっ、そろそろ時間だ!」
「行ってきます、お父さん!」
俺は翠の頭を撫で、背中を押した。
それに俺も、翠に出会えて、大きく変わったことがある。例えば...
「行ってらっしゃい、翠。」
新しい制服を着て元気に学校に向かう翠の姿は、
世界中の何よりも綺麗だった。
永遠とも思えた日々は @sandora1122
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