第3話 Test【能力検査】
それから俺たち一行が乗った馬車は王都への門を通った。
さっきの子すごい美人だったな。あの子もここら辺に住んでいるのだろうか。
薄暗い通路を抜けるとそこは人々で賑わっていた。商店街や追いかけっこをしている子ども達。
驚いたな。俺の目線の先には人間のように歩いている犬や猫、トカゲのようなのがいた。
やっぱり俺は異世界に来てしまったようだ。
「大丈夫かい?」
気付くと金髪野郎が話しかけていた。
「す、すまない。色んな種族がいてビックリしただけだ。」
俺は外を見ながら言った。
「そうだな。いきなり異世界に召喚されたんだ、驚くのも無理は無い。改めて私たちの勝手な召喚を許してくれ」
金髪野郎は膝に手を置き頭を下げてきた。
これは驚いたな、いかにも貴族らしき人が俺に頭を下げている。普通こうゆうやつはプライドが高い憎たらしいバカなはずなんだが。いや、バカなのは間違ってないか。
「やめてくれ、頭を上げてくれ。俺は気にしてないから」
俺は笑顔で金髪野郎に言った。
「そ、そうかありがとう」
金髪野郎は返すように少し笑顔を見せながら言った。
いやイケメンだなこいつ!何だこの爽やかスマイル、自分が悲しいわ!
しばらくすると馬車は止まり、ドアが開いた。
「
ドアが開くと目の前には黒色のスーツのようなものを着たイケおじが立っていた。
多分秘書とか執事とかだろう。
こうゆう立ち位置も結構憧れるんだよなぁ。
馬車を降りると俺の目の前には白くでかい城が立っていた。さっき見た街の真ん中にたっているお城だろう。
イケおじについて行くと城の中に入った。
俺が城に入ったことあるのは俺の地元で人気の遊園地ネズミーランドのシンデレラ城以来だ。
何回か妹と両親と一緒に行ったなぁ。
また一緒に行きたいなぁ。
気づくと金と赤で装飾された気品ある大扉の前にいた。
すごいデケェなぁ。いくらぐらいかけてんだろこれ。
「今からあなたはドニタスタ国王にお会いして頂きます。」
前にいたイケおじがこちらを振り返って言った。
へぇ、ドニタスタ国王ねぇ。
国王か…国王!?
「ちょ、ちょっと待ってくれ!こ、国王に今から会うっていうのか!?そんなの聞いてないぞ!」
俺はイケおじの肩を掴んで迫った。
「なんですと?確か御一緒だったトニト聖騎士長殿から説明があったはずでは?」
イケおじが驚いた様子で言った。
聖騎士長?もしかしてあの金髪野郎か!
あのクソ金髪野郎ぅぅぅ!
あいつ絶対言うの忘れてただろ!
「と、とりあえず国王にお会いしては?」
イケおじがスーツを整えながら言った。
「わ、わかった」
俺は一呼吸置き返事をした。
とは言ったものの今から国王に会うのか。
総理大臣とか大統領とか、国のリーダーとか映画とかでしか見た事ねぇぞ。
すると重々しく大扉が開き始めた。
やべぇよ!開き始めちゃったよ!
どうしよ!どうする!?
とうとう大扉は完全に開いてしまった。
大扉に続く部屋はものすごい広さで真ん中には赤いカーペットが敷かれていた。
そしてその先には大きな王座がありそこに白い髭を伸ばしたいかにも王様らしきおっさんがいた。
いや恐!俺これ変なこと言ったら死ぬやつだ!これ死ぬやつだわ!
「ドニタスタ国王様!
イケおじが俺の隣で膝を着いて言った。
うおぉ、やっぱ漫画みたいな感じで膝ついたりすんだなぁ。
とゆうことはあの王座っぽいのに座ってるおっさんが王様で間違いなさそうだ。
「
王様は重々しい声で話しかけてきた。
うわ恐!こんな圧のある声なんて、静かに怒ってくる先生ぐらい圧あって恐いわ!
「ど、どういたしまして〜」
俺は下手な笑みを浮かべながら言った。
すると俺は王様と目が合ってしまった。
な、なんだこの死んだ魚みたいな目!やっぱこの王様恐い!
「そうかそうか。それではまず
王様は死んだような目を真っ直ぐこちらに向け言った。
「俺の名前は
俺は胸を張って言った。
まぁ本当は嘘だけどな、俺の名前は
なぜ偽名を使うのか?だって?
そんなの簡単だ。ここは知らない世界俺の素性を知られると困ることがあるかもしれない、それに何かこの王様は胡散臭い。
そんな怪しいヤツに自分の素性を話すほど俺はアホじゃない。
だからとりあえず俺は素性を隠すことにした。
「そうか
王様が髭をいじりながら言った。
能力検査?いわゆる体力テストのようなものか、でも普通に恐いな。何されるかわからんし。でもここで拒否しても何されるかわからんしなぁ。
「わ、分かりました。受けさせてもらいます」
俺は頭を下げて言った。
「フォッフォッフォ。それは良かった!ではゼレノフ。
王様は笑いながら言った。
しかし俺には笑っているようには見えなかった。やっぱり何か怪しい、人間と話してる感じがしない。
この感じはなんなんだろうか…
それに隣で膝をついてるイケおじはゼレノフって言うのか。
「かしこまりました。それでは
ゼレノフさんはそう言うと立ち上がって、この部屋を出た。
俺はとりあえず王様に一礼して小走りでゼレノフさんについて行った。
結局王様は最後まで死んだ魚のような目をしていて恐かった。
ゼレノフさんにずっと着いていくといつの間にか石の
明かりはゼレノフさんが持っているランタンだけ。天井は蜘蛛の巣があり少し気味が悪かった。
しばらくするとゼレノフさんが立ち止まった。
「
また能力検査の結果にはランクがあり、下から順にロウラー級、スモーナー級、バラウラー級、ゴッドネスト級、ヘルゼノス級の5段階になっております。一般的にロウラー、スモーナーは低級冒険者。バラウラーは中級冒険者又は国軍騎士団兵、ゴッドネストは上級冒険者又は英雄騎士団兵。ヘルゼノスは英雄騎士団長級の扱いになります。ヘルゼノス級で現在確認されているのは、ケタル王国に3人、ファンタニア王国に2人、大魔王帝帝国を除く他国に1人ずつ、計9人になります。おっと長々と話してしまいましたね。私の悪い癖ですね。それでは検査室に入りましょう。」
ゼレノフさんはそう言うと扉の方に歩いた。
まぁあれだよな、簡単に言えばヘルゼノス級っていうのは1番すごくて、それがこの世界では9人いるってことだな。
我ながら良くまとめた。
でも俺はどれくらいなのだろうか?
転生されたぐらいなんだヘルゼノス級じゃなくてもゴットネスト級ぐらいにはいけるだろう。やはり上級冒険者だと恩恵も違ってくるのだろうか?
「
気付くとゼレノフさんが扉の奥でこちらを見ていた。
少し考えすぎていたな。
俺は急いでゼレノフさんの元に歩いた。
検査室とやらに入るとそこは綺麗な部屋だった。
部屋全体は水色に輝いていて、薄暗い部屋が少し照らされていた。これも魔法によるものなのだろうか。
部屋の真ん中には赤色の魔法陣のようなものがあり、その位置の天井にも同じようなものがあった。
なんだこれ、めちゃくちゃ綺麗だ。
光が綺麗に輝きあっていて魅了される。
「それでは
ゼレノフさんが魔法陣に手を向けて言った。
俺は言われるがまま魔法陣の真ん中に立った。
これ緊張するなぁ、ほんとに痛くないんだろうなこれ。
「
ゼレノフさんが白い手袋をはめながら言った。
うぉぉ!かっけぇ!俺もこんなイケおじになりたいわ。
「できてます!」
俺は何故か敬礼をしながら言った。
「それでは検査の方始めさせて頂きます。」
そう言うとゼレノフさんは両手を前に出し始めた。
《
ゼレノフさんの言葉が部屋中に響く。
瞬く間に輝いていた部屋がさらに輝き始め、赤色の魔法陣がゆっくり回り始めた。
徐々にその速さが早くなっていくと、上下の魔法陣から赤色の光が出始めた。
そのふたつの光が当たると、光の柱のようになり虹色に輝き始め、俺の体が浮き始めた。
え?え?なにこれ俺浮いてね?
魔法すっげぇぇ!
俺は宙に浮いたまま動きまくった。
空手のように正拳突きをしたり、回転蹴りをしたりした。
昇龍拳!!
うっひょぉぉぉ!!
魔法すげぇぇ!俺もこんなこと出来んのかなぁ!
すると俺の体は徐々に床に近づきはじめた。
え?もうこれで終わり!?
もう少し遊びたかったなぁ。
少しすると俺の足は床につき、部屋の輝きは薄まり、回っていた魔法陣は止まっていた。
前からゼレノフさんが近づいてくる。
「
ゼレノフさんが俺の目を真っ直ぐ見て話しかけてきた。
「そ、それで結果は?」
俺は恐る恐る聞いた。
まぁ転生した身だし?それ相応の階級でも怒られないだろ!
「あなたの階級はロウラー級です」
ゼレノフさんが顔を暗くして言った。
え?は?はぁぁぁぁぁ!?!?!?
異世界ライフより家に帰りたい!〜雑魚転生者の俺は家に帰るため、最強スキルで魔王軍とやらをぶちのめす!〜 永藤 雄輝 @nagafuziyuuki
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