第27話 ◇記憶?声△
それから、数日後。
放課後を迎えて最初に口から出たのは、「はぁ……」というため息だった。
どうしてこんな状態なのかと言うと、天霧さんとのあのやり取りを華憐に見られていたからだ。
最初は、クラスで変な噂が立つと思っていたのだけど、彼女が誰かに言うことはなかった。
その代わりなのか、ニヤッとした顔を見る頻度が増えた気がする。
すると、カバンを肩にかけた華憐が笑みを浮かべて言った。
「行きましょうか♪」
「え? 行くってどこに?」
「ハナさんのお
「へっ? どうして?」
「勉強会のためですわ」
「勉強会?」
はて、なんのことやら?
「入学試験を首席で合格したハナさんが頼んでくるものだから、びっくりしましたわ」
「わたしが? いつ?」
「昨日の夜ですわ」
と言ってスマホのトーク画面を開くと、昨日の夜のやり取り? を見せてくれた。
(……あれ? でも昨日の夜は、確か漫画を読んでる途中で寝落ちしちゃったんだけどな……?)
最近、ここ数日間の出来事を断片的にしか思い出せないでいる。
まるで、時間が飛び飛びになっているような。
「うーん……」
頭を捻っても思い出せない。……まぁいつか思い出せばいいかな。
煮詰まったら一旦休むことを、あの一ヶ月の日々で知った。
入学試験本番の一ヶ月前、参考書や問題集などをズラッと机に並べ、スマホを封印すれば準備OK。
人間、一ヶ月くらい徹夜が続いても死んだりしないという、独自で作った謎理論。
あの状況を逆転するにはこれしかないと当時の自分は思った。
……あのときかもしれない。自分がニュータイプだと思ったのは――。
まぁなんとか合格したとはいえ、付け焼き刃では入ってすぐについていけなくなると思っていたけど。結局、それは本当だった。
そういえば、試験が終わった勢いで暴飲暴食に走って……体重が三日でピーキロ太ったんだっけ……。
……。
…………。
………………。
という過去の話は、取り敢えずここまでにしてと。
まぁ、主席が最初のテストでボロボロだったら、陰でなんと言われるかわからないし。
……よしっ。
「勉強を教えてください、華憐先生っ」
「先生ですか、いいですわね♪」
と言って華憐は「ふふっ」と微笑んだ。
「また美桜ちゃんに会えるのが楽しみですわ」
「……また?」
ということは、一度会ったことがあるのか。
……うん? でも、華憐を
「――――ありますわ。入学してすぐの頃――――」
「入学して……すぐの頃……」
――――――――――――――――――――――――。
あっ、一緒に夕飯を食べたんだ! どうしてこんなことを忘れていたんだろう?
最近、頭がこんがらがることがあるから、もしかしたら疲れているのかもしれない。
今日は早く寝るとしよう。
兎にも角にも、今日は家で勉強会だ。
そろり……そろり……。
「? 千鳥足でどこに行くの?」
――ビクッ。
カバンを持って扉の方に行こうとする塔子を呼び止めると、ゆっくりと振り返った。
「あは、あははは……」
「塔子も一緒に勉強しない?」
「あ、あたし? あたしは……あ、顧問の先生を見つけなきゃいけないから、パスっ!」
「…………」
じーーーーーっ。
「えっと……」
おでこからダラダラと汗が流れてますけど?
はは~んっ、さては、勉強をしたくないと見た。
実は頭がいいのに、本人曰く、勉強は得意ではないらしい。
しかし、運動神経バツグンでギターも弾けるから、モテる要素しかない。
それに、
その能力を少しくらい分けて欲しいものだ。本人は能力というより、至って普通のことだと言っていたけれど。
「……って、塔子は?」
「今、慌てて出て行かれましたわよ」
と言うと、指さした先にある扉が丁度閉まった。
さっきまで目の前にいたはずなのに、ちょっと目を離した隙に……。
わたしの足の速さじゃ追い付くわけもないし。
天霧さんは……今日は撮影のお仕事があるからお休みか。
「仕方ありませんね。では、二人で行きましょうか」
「そ、そうだね」
すると、華憐は嬉しそうに満面な笑みを浮かべて言った。
「ふふっ、楽しみですわ――♪」
あれ、一瞬目が光ったような。
目元を指で
「うん?」
「どうしたのですか?」
「え、いや、なんでもないよっ」
気のせいだよね。そもそも、人の目は光ったりしないし。
「ただいまー」
「お邪魔します」
わたしが靴を脱ぐ隣で、華憐は一度上がってからその場にしゃがんで靴をキレイに揃えた。
マナーを熟知しているからなのか、その動きに一切無駄がない。
さすがお嬢様と言ったところか。
それからリビングに入ると、誰の姿もなかった。
「誰もいらっしゃらないみたいですわね」
「多分、買い物に行ってるから、すぐに帰って来ると思う。あっ、美桜は部活だから帰って来るのは夕方かも」
「あら、そうですの」
――ふふっ。
……ん?
「飲み物持ってくるから、好きなところに座ってて」
わたしは部屋を出てキッチンに来ると、オレンジジュースの入ったコップとクッキーをいくつかおぼんの上に乗せた。
お嬢様のお口に合うかはわからないけど。
まぁ、いいでしょ――
『一……真…………』
……ッ!!?
慌てて周りを見渡したが、部屋にいる華憐を除けば、他には誰もいない。
この声……どこかで…――
「ハナさん?」
振り返ると、扉を開けて華憐が中に入ってきた。
「どうされたのですか?」
「…………」
「?
「いや、別に……あ、今の声……聞こえた?」
「声? なにも聞こえなかったですわよ」
「そっか……」
じゃあ、今の声は気のせいってこと? うーん……。
「あ、どうしてここに?」
「お手伝いに来たのですわ。一人で運ぶのは大変でしょう?」
「そんなことはないけど、ありがとう」
わたしと華憐は、おぼんを持って部屋に戻ったのだった。
『………………』
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