第2話 浮かれオタク
「ここまでくると本当に頭がおかしいとしか言いようがありませんよね…」
そうやって文字を打ち込み、やつの偏りすぎた意見を添付した。
それから数時間後…
「初バズりですよ…こんな意見は絶対におかしいとは思ってたんですけど、やっぱり皆さんもそう思いますよね」
気がつけば「いいね」が1万以上ついていたのだ。その後、自フェミがどうなったのかは知らないし、知る必要もない。
次の日、バズった驚きと優越感でいつもよりニヤニヤしながら通学した。
バス停でも、バスの車内でも、ついニヤけてしまった。
「ねぇあれ…なんか
「ホントだ。どうしちゃったんだろうね」
おっといけない。俺としたことがニヤニヤフェイスを女子たちに見られてしまった。
ニヤニヤしたこの顔は自分でも気持ちが悪いと思っているんだ。周りの人は(特に女子は)計り知れないほどの気持ち悪さを感じていることだろう。
現に今、女子たちは時に顔をしかめながら、そして笑いながらこちらを見ている。
(放課後までこのニヤニヤ、抑えられるかな)
結論から言うと、意外にも耐えられた。
ニヤニヤは耐えられたのだが、今度はまた別の問題が発生した。
(どうしよう…めっちゃ自慢したい…)
誰でもいいから、華の初バズりを披露したい。ひけらかしたい。
だけどもちろん、こんなオタクだだ漏れのアカウントの存在は誰にも知られてはいけない。バズりを自慢しようだなんて考えは本末転倒なのである。
(もう一回バズった書き込み見よっと…)
今この教室には俺しかいない。窓から差しこむ西日が眩しい。みんなはもう部活に行ってしまったし、帰宅部のやつらも補習で忙しいらしく教室にはいない。
誰も来ないなんて保障はない。だけど…
(見られたら…そのときはそのときだよな!そもそも俺、バズりを自慢したいんだし!)
俺は妙にのんきでガードが甘かった。
宝くじに高額当選した者が悲惨な末路をたどるのと同じような理屈なのだろうか?
見られても構わないという、本心とも虚勢ともつかない想いが、俺を動かした。
「ふふっ…」いいねがさらに増えている。
2万になっている。このとき俺は、机に突っ伏し、右腕に顎を乗せて完全にリラックスしていた。
「帰らないの?」
「どぅわ!?」
とんでもないことになってしまった。俺の席は廊下側の一番後ろにあるのだが、まったく足音も立てずに近づいてきた彼女が突然声をかけてきたのだ。
(やばい…見られたか!?)
そもそもこの人とはそんなに話したことがない。名前は確か…
…いや、それどころじゃない。
問題は俺のアカウントが見られたか見られていないかであって…
「えっと…なんていうか…放課後が好きです…みたいな…」
「ふふっ…『好きですみたいな』って何〜?日本語ちょっとおかしかったよ」
あ、笑ってくれた。そうだ、笑わせて話を逸らせば…
「ところで、そのアカウントって取尾くんのやつ?」
(アッ…)
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