惑星

概要:多分、惑星の擬人化的なやつ


私はゼムから離れることを許されないの。

だから、あなたは私を諦めて。



ルナ、僕の愛しいルナ。どうして君は、そんなこと言えるんだい?


「寂しいのかい?メルリオ」

「どうして?僕は、ソルの一番近くにいるのに」

尊敬してやまないソルの一番近くの席を僕は与えられた。

隣にはヴェニスもいるし、寂しいなんて思ったことはない。

「かわいそうに」

ソルは時々意地悪だ。

僕の知らない僕を見透かして、気付きたくないことまで気付かせる。

大好きなのに、僕はソルが好きなのに、本当に怖いと思う時がある。

「敬愛と愛情は違うものだよ。君が欲しているのはどちらかな?」

ソルが躍る。

影がざわめく。

敬愛は、ソルに捧げた。

だったら、愛情は?

僕はソルが好きだし、仲間も好きだよ。

ヴェニスもユピトもサトルもユラも、ゼムは…嫌いかもしれない。

彼が、僕は嫌いなのかもしれない。



ねぇ、僕は何を求めているのかな?

教えて、僕の手を握って

「最近、やつれた」

「そうかな?」

ゼムが僕の隣で腕を組む。

その側には、ルナがいる。

ルナは黙ったままで、僕とゼムだけが話をしている。

「ヴェニスとうまくいっていないのか?」

「彼女とは変わりなく過ごしているよ」

「ふーん」

ヴェニスは姉のような存在。ゼムが思うような関係にはならない。

ゼムはそれが不満なのかな。

僕のことなんて、放っておけばいいのに

「アリスとは?」

「最近あってない」

僕は知っている。

君はアリスに夢中なんだ。

側にいるルナよりも、少し離れたところにいるアリスの方が君は好きなんだ。

ルナは僕を見ない。

ずっと、ずっとゼムを見ている。

ねぇ、僕を見てよ。

一度でいいから、正面から僕を…

ゼムとルナが去っていくのを僕は黙ってみていた。

さよなら、も声が震えてうまく言えそうになかったから、気付いてしまうよ。

君が好きだって…


全てを焼き尽くすように熱い踊りをソルは踊り続ける。

僕には目もくれず、ただただ踊り続ける。

「ソル、気付きたくないんだ」

僕はソルの側にさえいることができたらそれでいい。

それで、いいんだ。

「嘘をつき続けるのか、メルリオ」

意地悪なソルは、聞いていないふりをして全て聞いている。

僕の心も全部知っている。

「私がお前を焼き尽くすまで、嘘をつき通すというのか?」

「彼女の世界に、僕はいない」

見えてすらいないのかもしれない。

触れることすら許されないなら、僕はどうすればいい。

「果たして、そうか」

「え?」

ソルが僕を見下ろす。

暖かな炎は天高く舞い上がる。

「お前の世界と、ルナの世界は違うのか?世界とは、お前が思うより狭いかもしれんぞ?」

僕の胸に指を立て、紅いきれいな瞳が僕をとらえる。

「互いが逃げていては何も始まらん」

瞳の中に焔を宿しているような、僕を逃がさない色だ。

「追うことは許される?」

「誰に禁じられている?」

「…誰にも」

心が   軽くなった


ねぇ、今度会えたら話をしよう

僕が君の視界に入るから

もう、諦めることはしないから

いつか、君を連れ出すんだ

そしたら、一緒に広い世界を旅しよう

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短編集 文目鳥掛巣 @kakesuA

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