七月、某路地裏にて
ある路地裏で、くたびれた様子の男が佇んでいる。夏の暑さが容赦なく世界を照らす中、この路地裏だけは妙に平和だ。
「うーん、それにしても名前が、みずね いよ、そんでもって地名が、うのせ、っていうのはちょっとやりすぎだったかな。まあでもタマも気づいてる様子はなかったし、どうせ僕たちの記憶は全部消えるし、これくらいのお茶目は許されるよね?」
路地裏には脱ぎ捨てられた制服と、宙に浮かぶシルクハットのシルエットが映ったが、それらはすぐに、揺れる空気に溶けていった。
少女が、不思議そうにそれらを見つめる。しかし、すぐにそれは自分の見間違いだったと気づく。だが、なぜだかその路地裏を、彼女は悲しそうな目で見つめていた。
少女のポケットが震える。それを確認した彼女は、少し不思議に思いながらも、どこか清々しい様子で、街をかけていった。
スクールカバンにつけた、玉三郎、とネームの入った可愛らしい首輪を揺らしながら。
七月、某路地裏にて 白銀 来季 @hakuginraiki
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