10

 しばらくして…


 再び龍神駅前に戻った私は、南口のロータリー近くのドラッグストアで、少し買い物を。そして、それを済ませた後、あらためて北口へと向かいました。


 すると、その最中です。


「あの、すみません…」


 人々が行き交うロータリー脇の歩道上、私は突然、自身の斜め向かいから声をかけられました。


「は、はい…?」


 はたと立ち止まった私の前には今、ひとりの青年が立っています。


 それはそれは、まったく見知らぬ人ですが、ちょっとイケメン…てへっ。


 で、そんなお方が、私なんかに何用かと思えば、


「あの…よかったら、その辺で僕とお茶でもどうですか」


 ええっ、なんと今時分、しかもこんなところで難破…いえ、ナンパでしょうかっ?  


 それとも何かの勧誘ですとか。


「キャッチセールスとかじゃないですよ。決して怪しい者じゃありません」


 あ、違うんですね。


 ということは、これは男女いずれの姿においても、風味絶佳19年の人生初の被ナンパとなります。


 いえ、迷惑どころか、むしろ私は嬉しいかな、と。特に、こうして女装している時に、男性から(おそらく)『女性』として声をかけられたのですからね。


 女装する男性の心理は実に多様だそうですが、私の場合は意識的にか無意識か『やはり男性の興味を惹くには、モロに男の姿であるよりかは、まだ女の姿である方がよいから』と、自己分析しているので…


 まあ、もし男の子とバレたら気まずいこともあって、結局はお断りしましたが、でも少し自信がついた気がします。この今の自分の姿に。


 そのせいでしょうか。いつも見慣れたはずの駅前の景色が、いまは少し違って見えるように感じながら、私は再び歩き出しました。




           

                   お・し・ま・い

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ドキドキ絶佳ちゃん Hiroe@七七七男姉 @138148

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ