5:皆ニコニコ
目覚めると、オレは縁側に置かれた座布団の上にいた。
まだお迎えではなかったようだ。
よいしょと体を起こし、ゆっくり歩いて良い匂いがする台所へ向かう。
ダイニングでは大勢の人間がワイワイと楽しそうに飯を食っていた。
男と女、それぞれの家族がいるようだが、詳しくはわからない。
ナミは子供用の椅子に座ってスプーンで何か食べている。
じじいも味噌汁をすすり、うまそうに「ふいー」と息を吐いていた。
オレはじじいの足元で言った。
「おい、じじい。孫達の話、全部聞こえてるだろ。それでもオレは礼を言ってやったぞ。えらいだろ。じじいも死ぬ前に礼を言ってやれよ。文句もあるだろうけどさ」
じじいがよぼよぼの腕を伸ばし、オレの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「マル、みんながいてくれて、ありがたいなぁ。わしは幸せ者じゃ」
じじいがそう言うと、女が「ほら、おじいちゃんたら、さっきからこんな感じなのよ。寂しくなっちゃう」と言った。
誰かが「おじいちゃん、ギネスに載るまで死んじゃダメだぞ」と茶化す。
みんなが「そうだそうだ」と笑った。
「ほんとだなぁ」
じじいも笑う。
あいつら、何だかんだ言っても仲がよさそうだ。
それが家族、というものなのかもしれない。
オレは鼻でフンと笑って機嫌良く「ニャア」と鳴いた。
「お互い長生きしようぜ。なあ、じじい!」
end.
ちょうどぴったり、ステキな変身 ましろい冬野 @huyuno-mashiroi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます