第17話 子供とパペット

 「パペ!!!パッペー!!!」


 ジタバタと暴れるパペットをメアルさんは離さずにいた。


 「それで・・・それはなんですか?」


 メアルさんの抱えているパペットを見ながらロアさんが言った。


 「パペットのパペちゃん。」


 もう名前つけてたんですね。


 「その子どうするんですか?」

 「飼う!」


 メアルさんは子供のように目を輝かせていた。


 「パペーーーー!!!」

 「すごく嫌がっているみたいですけど・・・?」

 「大丈夫!餌もあげるし、散歩もするし!ちゃんとお世話するから!」


 メアルさんは、口調まで子供になっていた。その間もパペちゃんはずっと暴れてるが、それをメアルさんがギュッと抱きしめている。


 「パペットって何食べるんですか?」

 「まりょく〜〜。」

 「メアルさん魔法使えないんですよね?ダミー魔法使えなきゃ餌あげれないですよ・・・?」

 

 パペットは主人から与えられた魔力によって活動ができる。ダミーが使えないとなるとパペットの魔力が空になりただの人形に戻ってしまうらしい。


 「でもパペちゃん魔法も使えない割にそこそこ強い魔力持っているからきっと何十年も魔力あげなくても動くよ。」


 子供口調のままパペちゃんの説明をするメアルさんにロアさんが首を傾げながら聞いた。


 「メアルさんどうやってパペちゃんの魔力測ったんですか・・・・?」


 人間は自分の魔力の大きさがわかっても他人の魔力の大きさを測ることができない。


 「これ使った〜」


 メアルさんはポケットの中から半透明のキューブを取り出した。


 「エリュトロンの鱗じゃないですか!」


 ロアさんが驚いた様子でエリュトロンの鱗を見た。

 エリュトロンは、魔力に干渉され、鱗の色が変わる珍しいドラゴン。自身から放出される魔力が高ければ高いほどより濃い赤色になる。全世界に分布しているが、子育てをしない生態からその個体数は極めて少なく、見ることがあればそれだけでいいことが起こると言われている。


 「治安部隊でもなかなか手に入らない貴重品!どうしてあなたが?」


 リリアさんも驚いた様子でエリュトロンの鱗を見ていた。


 「まぁ、どうやって手に入れたかは個人秘密さ。」


 さっきまで子供口調で話していたメアルさんが急にカッコつけて言った。


 「これがあればあの人たちの魔力を測れます!メアルさん、お借りしてもよろしいですか?」

 「いーよー」


 メアルさんがロアさんにエリュトロンの鱗を渡した。

 ロアさんが近くの空っぽになった人に鱗を近づけるとその色は赤から紫を通り青に変わり、次第に色が薄れ、鱗は真っ白になってしまった。


 「やっぱり・・・」

 「白はどういう意味なんですか?」

 「魔力がないってことです。」


 人間から魔力がなくなるとどういう原理か行動不能になってしまう。そのことは小学生の頃に学ぶが、実際魔力ゼロの症状が教科書に書いてあるわけでもなく、魔力ゼロの状態を見たことがある人はこの世にはいないだろう。だから今回はロアさんのところまで依頼が回ってきたんだ。


 「収穫もあったんだし、そろそろ基地に戻らないと。パペちゃんもいるし、この辺は夜真っ暗だよ。」

 「そうですね。結果を整理して、またわからないことが出てきたら明日調査することにしましょう。」


 あたりも暗くなり始めた頃、俺たちはビルを出た。


 「あ・・・・!!」


 ビルを出ると小さな子供がいた。


 「ぱ、パペちゃんを返せ!」


 その子は俺たちを見ながら言った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る