第15話 空っぽの人
「そういえば」
現地に向かっている途中、ロアさんが振り向き話しかけてくる。その時、メアルさんと話していた内容が聞かれたんじゃないかと思い、俺とメアルさんとで同じタイミングで驚いた。
「ど、どうした?ロア?」
「先日のルフレッドさんの仮面をつけた影の話ですけど。」
違う内容でよかった。メアルさんと一緒にほっとした。
「あれ、俺、ロアさんに影の話しましたっけ?」
「俺が軍にレポート出したんよ。ルフのことは自由にしていいって言われているけど、禁忌に関することはちゃんと報告しないとなんだよね。まぁ関係あるかどうかわからないけど。」
「それで、軍にある資料は特別隊のみに全公開されているんです。メアルさんはもう読んでいるかと思うのですが、今回の案件も現時点で分かっている情報はちゃんと公開されていますよ。」
「俺めんどいから読んでなーい。」
そんな重要なことをどうしてメアルさんは俺に言ってくれないのだろうか。まだ第三特別隊に入れさせられて日が浅いから公開されている情報を読んだところで何かわかるわけでもないが、いずれ必要になっていくだろ・・・。そしてメアルさんは今回のこと何も知らないのね。
「あっと・・・それで影の話なのですが」
メアルさんの反応にロアさんが少し戸惑い気味で話を戻す。個人に来た依頼とはいえ、隊長なのに任務のことを何も知らないで来るのは流石にどうかと思う。
「軍では3体の影をクラスツーに指定し、発見した場合は報告しろとのことです。状況次第では交戦し、情報を集め、または抹殺しろとのことです。影ですから抹殺という表現があっているかはわかりませんが。」
クラスツー。人類絶滅の恐れがあるクラスワンの一つ下のクラス。禁忌を犯す恐れはないが、人類の脅威となりうるもの。クラスツーの場合、国一つ滅ぼせるレベルの強さらしい。
「へー、戦っていいんだ。」
メアルさんがハットを被り直しながら言った。
「メアルさんなら大丈夫かもしれませんが、気をつけてくださいね。状況によってはクラスワンに引き上がる恐れがありますから。」
「あー、でもレポート書くのめんどくさいな。」
呑気に大学生っぽいことを言っているが、国ひとつ滅ぼせるレベルだろ。国守る立場なんだからそれぐらいちゃんとやれよ・・・。
「つきました。」
リリアさんがそういうと古くボロボロのビルについた。当然窓なんてなく、窓がはまっていたであろう枠や壁はボロボロと崩れ、部分的に鉄筋が顔を出している。
中に入ると空っぽになった人が大きな布の上に並べられていた。口はぽかんと開いていて、目は天井を見ている人も言えば窓の外を見ようとしている人もいる。いずれもその位置から動くことなく、目の前に行っても反応すらしない。
「基地には収容しきれないのでこのビルに全員集めています。」
ロアさんとリリアさんが空っぽの人に近づき手を振ったり脈を測ったりし始めた。
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