第14話 基地

 基地の中には病室がいくつかあり、中を覗くとベッドは全部患者で埋まっている。


 「これが空っぽになった人たちですかね?」

 「起きないからそうなんじゃないかな。」


 メアルさんは患者を「おーい」や「もしもーし」と声をかけながら揺さぶっているが誰一人として起きない。こんなことしちゃいけないんだろうけど止める気にもなれない。ロアさんに怒られてしまえ。


 「にしても肉付きがいいな。」


 どの部屋の患者も筋肉質だったり、少し太っていたりと肉付きのいい人ばかりだった。


 「どうしてそんなことを・・・?」

 「いや、空っぽになっているのは、退廃地区、つまりスラム街の人たちだろ?」


 退廃地区の人たちと言われると何日も食事できなくて腕や足に脂肪はおろか、筋肉すらついておらず、骨にすぐ皮がついている、それほどほっそりしているイメージがある。そのイメージに比べるとここにいる人は『痩せている』と言う表現が合う人はいるが『痩せ細っている』と言う表現が合う人はいない。


 「それに空っぽって言うより寝ている感じがするんだよな。その辺は人によって表現が変わるかもだけど。」


 空っぽ、と言われると口はぽかんと開いていて、目は何を見ているのか焦点が合わず、ぐったりと壁にもたれかかっている様子が思い浮かぶ。もしかしたら衛生班の人たちが処置してくれてこうなっているのかもしれないけど。


 「もしかしてカルサハでの魔力瓶も関係している・・・?」


 魔力瓶を服用した人は、昏睡状態になっているらしい。この地域の人も原因不明で空っぽになっているらしい。どうも似ているんじゃないか、そう思えて仕方がない。


 「ないだろ。任務受けるときに『空っぽ』って言っていたみたいだからね。昏睡状態だったら昏睡状態っていうだろ。」


 言い訳っぽく聞こえるがそうかもしれない。素人が見たのならまだしも、現地の医者や衛生班が見たのならちゃんと昏睡状態ってわかるか。


 「そういえば、魔力瓶の話は結局どうなったんですか?」


 カルサハの青年に捕まり、トリーという名で呼ばれる影を逃した後、気絶していたのか寝ていたのか俺は結末を知らない。


 「あー、あれなら現場の魔法部隊に取り締まってもらったよ。だからもう俺らの仕事は終わりー。」

 「任務ってちゃんと解決しなくてもいいんですか・・・?」

 「ある程度収束したら引き渡すのがほとんどかなー。ロアの任務は知らんけど。」


 患者を見ながら話していると後ろから声がした。


 「何しているんですか?」


 振り向くとロアさんとリリアさんがいた。というか見つかってしまった。まずい、怒られる・・・!!!


 「冒険してた。」


 メアルさんがストレートに答えた。


 「患者さんに変なことされると困るのでそういうのは控えてもらえますか?」


 リリアさんが丁寧に言う。だけどこの人の場合、こんな丁寧に言ってもやめないだろう・・・。


 「ここにいる患者は任務の?」

 「いえ、ここにいる人たちはカルサハの魔力瓶案件です。」


 後からメアルさんに聞いた話だが、カルサハとエジサクワは隣国であり、第二部隊がどちらも担当しているらしい。


 「んじゃ今回の任務の患者は?」

 「基地のベッドが足りず現場に放置しっぱなしです。特に動く様子もなく、誰かに気概を加えるわけじゃないですから。それに・・・」


 リリアさんが患者を見ながら言った。


 「貴族優先みたいですよ。世界を平等にするために魔法軍はあるはずなんですけどね。」


 上からそう言われたのだろう。貴族優先と言う言葉からきっとお金が絡んでいる。


 「大丈夫ですよリリアさん。そのために僕たちが来たんですから。」


 ロアさんがすごくかっこよく見えた。

 見た目は可愛い系で中身もかっこいい、これが本当のイケメンなのか。


 「では行きましょう!皆さん。」


 ロアさんはどこか張り切っている様子だった。

 リリアさんに案内され、現地に向かって位途中、メアルさんと「ロアさんはリリアさんを狙っているんじゃないか」と言う話題で盛り上がった。もちろんロアさんとリリアさんには聞かれないように話した。



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