第13話 富と貧の国

 翌日、俺、メアルさん、ロアさんの3人でエジサクワを訪れていた。

 まずは依頼者の元へ行くらしく、そこの向かう途中だった。


 「思っていたより治安悪くないですね。」


 野菜、果物、薬草、肉など様々なものが並んだ賑やかな市場があり、商品が盗まれている様子もないし、喧嘩をしている様子もない。


 「犯罪を起こしている人のほとんどが退廃地区に住んでいた人ですからね。退廃地区の人たちが動けない以上、犯罪率も減っているんでしょうね。」


 市場の中央通りを進んでいくとだんだん店の数も減っていき、道幅も狭くなっていった。


 「ここから退廃地区ですので、みなさん気をつけてください。」


 コンクリートでできた背の低い建物がいくつもあり、ほとんどが窓や扉がなく、壁にはたくさんのいたずら書きがされている。建物の1つ1つはそれほど大きくなく、中は6畳ほどの大きさの部屋が一つあるぐらいで、その小ささと荒れ具合からしてとても住めるような場所じゃないと思える。建物は小さいものの、この国の多くの人がここで生活しているのか建物の数は多い。それなのに、退廃地区に入ってからまだ人っ子一人見ていない。流れる湿った空気と妙な静けさが嫌な緊張感を煽ってくる。

 

 「ここに依頼者がいます。」


 その建物は大きさは周りの建物と同じだが、いたずら書きが全くされていない綺麗な壁で、そこには手の平ぐらいの大きさで軍のマークである魔法陣が描かれていた。


 「入りますね。」


 ロアさんが軍のマークに触れると青白い光が俺たちを包んだ。

 

 目を開けるとそこには6畳ほどのスペースではなく、小さな病院の待合室のような空間になっていた。


 「ロアさん!お待ちしてましたよ!早めにくると言っていたのでてっきり昨日のうちに来てくれるかと思いましたよ。」

 「ああ、いや、僕もそのつもりだったんですけどちょっと事情が変わっちゃって・・・」

 「そちらのお二人は?」

 「ああ、こちら第三特別隊のお二人です。」


 ロアさんより少し背が高く、青い髪の白衣をきた女性とロアさんが話していた。

 ある疑問が浮かび、メアルさんにだけ聞こえるぐらいの小声で聞いた。


 「メアルさん、そういえば僕って犯罪者ってことになってますよね?」

 「そうだけど?」


 メアルさんはいつも通りの声で答える。


 「ってことは僕の存在は他の部隊に知られちゃダメなんじゃ・・・?」

 「ああ、大丈夫だよ。ルフのことは全部俺に丸投げされてるし、牢獄から出す事も連れ回す事も伝えてあるから法律的には問題なしよ。」


 『法律的には』と言うところで少し引っかかるが、ひとまず大丈夫ならそれでよかった。


 「こちら僕がよく一緒にお仕事させてもらっているリリアさんです。」

 「魔法軍第二治安部隊衛生班、リリア・ローレンツです。よろしくお願いします。」

 「第三特別隊、メアル・クライスでーす。」

 「同じく第三特別部隊、ルフレッド・オールレです。」

 「それでは僕は少し第二治安部隊の方々と情報交換してくるので、お二人はここで待っていてください!」

 

 ロアさんとリリアさんは話しながら奥の部屋へと向かっていった。


 「他の部隊には班があるんですか?」


 椅子に座りながらメアルさんに聞く。


 「班を作るかどうかは部隊によって変わるかな。治安部隊はだいたい衛生班と警備班に分かれているけどね。」


 『うちは班作らないんですか?』と聞こうと思ったが4人と言う少数で班を作る方が難しいか。


 「この施設で例の空っぽになった人間を診ているんですかね?」

 「どうだろ?10〜20人ぐらいならそれもできそうだけど、ここはきっと第二治安部隊の基地だからね。ちなみに治安部隊と魔法部隊は部隊ごとに担当国があるからこの国には第二魔法部隊もいるんじゃないかな?」


 そう言うとメアルさんは部屋の奥へと進み出した。


 「ちょ、どこ行くんですか?」

 「ん?冒険。ルフも来なよ?軍の基地なんてなかなか入れないからね。」

 「ロアさんにここで待ってろって言われたじゃないですか・・・。」

 「大丈夫大丈夫、すぐ戻ってくるから。」

 「ロアさんに怒られても俺のせいじゃないですからね?」

 

 俺たちはロアさんが帰ってくるまでの間、基地内を冒険することにした。

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