第12話 使命

 家に戻り、天命の加護について詳しく教えてもらった。


 天命の加護とは天から与えられた使命をまっとうする間、加護を受けられると言うもの。その加護の内容は、ダメージ無効と身体の大幅強化。その代わり魔法は使用できなくなってしまう。なるほど、だからこの家には車や階段といった教科書にしかないものがあるのか。魔法が使えないことを考慮しても天命の加護の恩恵は大きく、今では軽自動車なら軽く持ち上げられ、マッハよりは早いとか・・・。


 「それでメアルさんの使命って?」

 「あー、あの楔を守ることだよ。ほら冷蔵庫の中のアレ」


 つまり、メアルさんは禁忌を犯す人間がいないかの監視役ということ。


 「とりあえず、お風呂でも入ってきなよ、沸かしてあるから。ルフ今、結構臭うよ?」


 そういえば牢屋から出てまだシャワーすら浴びていなかった。牢屋にいるときは当然お風呂は愚か、シャワーすらあびれなかったからその習慣が完全に抜けて、メアルさんに言われるまでは気づきもしなかった。きっと今だけでなく、カルサハに行った時も相当臭っていたんだろうな。

 言葉に甘え、お風呂に入ることに。脱衣所には綺麗な軍のローブと今きているのと同じ服があった。メアルさんはコートタイプの軍服を着ているからきっとこれは俺のなんだろう。


 お風呂を上がり、久々のお風呂でさっぱりとし、やっぱり清潔感って大切だよな〜と思いながら、用意してあった服を着てリビングに出た。


 リビングに出るとメアルさん以外に誰かいる。

 赤いローブを着た小柄で金髪の男。これが俗にいう可愛い系イケメンというものだろう。こいつ・・きっとモテるな!!そう思っていると二人がこちらに気づいた。


 「あー、こいつこいつ、こいつがルフレッド」

 「あの噂のクラスワンですか?」

 「そうそう、その噂のクラスワン。世界ぶっ壊す可能性がある適性魔法なし人間!」


 メアルさんは大声で笑いながら言った。ハイテンションなのはいいけど人が気にしていることは笑うなよな・・・。


 「ルフ、こいつがロアね。」

 「第三特別隊、ロア・エルラです。よろしくお願いします。」

 「ルフレッド・オールレです。よろしくお願いします。」


 ソファから立ち上がり、丁寧にお辞儀までしてくれたロアさんの身長は俺より頭1.5個分低かった。


 「ロアの魔法はリカバー、回復中心の魔法で戦闘向けじゃない。それに加えて頭いいから魔法薬の調合もできるんだよね。ここにある魔法薬は全部ロア製だよ。」

 「そんなこと本人の許可もなく喋っちゃっていいんですか!?」

 「これからチームで行動することもあるだろうし、別にいいよな?ロア。」

 「ええ、大丈夫ですよ。」


 きっとこう言うことが何回もあったんだろう。ロアさんはにこやかに答えた。


 「なんで今日は戻ってきたの?」

 「実は任務のことで・・・」

 「ロアにきた任務ならロアがやればいいだろー」


 以前、個人に任務がくると言っていたけど同じ部隊の仲間が相談しにきているんだから話ぐらい聞いたらいいじゃないか。まだ数日しか時間を過ごしていないけどメアルさんってほんと適当だよな・・・。


 「エジサクワ、退廃地区の調査です。」

 「エジサクワって言ったら富の国じゃん。おまけに貧の国でもあるけど。」


 エジサクワ。貧富の差が極端に激しい国。貴族は一生遊んで暮らしても余るほどの資産を保有している。しかし、貴族でないものは明日の生活もどうなるかわからないぐらいの生活を余儀なくされている。


 「世界でも稀なミューエル石の宝庫って言われてるからなー、それを狙って紛争もあったりで大変なんだよな。」

 「ミューエル石ってなんですか?」

 「ミューエル石は強力な魔装具を作るために必要な石です。石だけで魔力が生成されるから装備している人の魔法や魔力関係なしに強力な攻撃力、または強い耐性を持った魔装具が作れるんです。それに加えてミューエル石を使った魔装具は装備者に魔力を要求しませんからね。それに軍のローブもミューエル石を擦り込んだ繊維を使っているので一般人の魔法だったら防げますよ。」


 そんな貴重な資源を使っているってことはこのローブ、結構お高いんだろうな。


 「確かにロアは男って言うよりもオトコの娘的な見た目しているからなー、多分すぐ犯罪に巻き込まれるだろうな。しかも退廃地区だもんな。」

 「いやいや、見た目とかじゃなくて、ほら僕ってどっちかって言うと戦闘向けの適性魔法じゃないじゃないですか。だから心配で・・・。」


 メアルさんが勝手に話を進めていく。


 「ところで、ロアさんの任務ってなんなんですか?」


 話を元に戻すとメアルさんが「確かにー、気になるぅー」と半ばふざけながら言った。この人は重要な部分を聞く気があるのかないのか。


 「最近、エジサクワの退廃地区では空っぽの人が溢れているみたいで、その調査に行けと言う任務です。」

 「そんなの現地の医者か治安部隊に行かせればいいじゃん。」

 「それが今のところ原因がわかってないみたいで、急遽、僕がいくことになりました。原因を探るところからなので、時間もかかりそうなんですよ。なのでメアルさんに来てもらいたくて・・・。」

 「まぁ俺は予定ないからなー、ルフは?なんか予定ある?」


 予定ある?なんて聞かずにもわかるだろ、予定なんてあるわけない。


 「いや、特にないですけど。」

 「んじゃ決定。明日からでいい?今日はのんびりしたい気分」

 「あー調査なんでなるべく急ぎたいんですけど、メアルさんがそう言うなら・・・」

 「メアルさん基準でいいんですか?」

 「メアルさん気分屋なのでこうなると動いてくれないんです・・・・。」


 ロアさんは「アハハ」と困っている顔のまま愛想笑いを浮かべた。


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