第11話 天命の加護
「それで、天命の加護ってなんですか?」
家から少し離れたところでメアルさんは立ち止まった。
「はい、これ」
メアルさんはポケットから水の入った瓶を取り出した。
「なんですか・・・?これ」
「水」
「それぐらい見ればわかりますけど、なんで水?」
「これは一応魔装具なんだよね。記憶をなくしたルフのために説明するけど魔装具ってのは魔力を込めて作られた道具のこと。装備することで自分の魔法を強くしたり、その人が不可能な魔法を使用できたりするんだ。ただ使用に魔力を要求されるものばかりだよ。それでこの水は攻撃用の魔装具。小さい魔力でも扱えるから基礎魔法しか使えないルフでも大丈夫だよ。」
こんな少量の水でどう攻撃するのだろうか。という疑問を抱きながらもメアルさんにその水の使い方を軽く教わった。
「それで、俺はこの水で何をすればいいんですか?」
「俺に攻撃して欲しい。」
「えっと・・・いや・・・その・・・・」
メアルさんにそう言う趣味があったとは思いもしなかった。にしても水はともかく銃ってエスカレートしすぎじゃない!?
戸惑いの表情とギャップによる笑いを堪え切れずにいるとメアルさんが訂正した。
「そう言う趣味じゃねーから。『天命の加護ってなんですか?』って聞いてきたのはそっちじゃん?あ、逆に?逆にルフがそう言う趣味あるからそう言う発想になるのかな?」
「いや、俺もそんなんじゃないですって!」
「必死に弁解しようとしているところがまた怪しいんだよな〜」
「へぇ〜」と言いながらニヤニヤし、自分の中で何かを完結させるメアルさん。こう言うタイプは相手にすればするほど自分が不利になるから話題をすり替えた方がいいってことを俺のない記憶が教えてくれた。
「じゃぁ行きますよ」
何はともあれ、本人が攻撃しろって言うんだからこれもちゃんと当ててあげなければならない。
瓶を蓋しているコルクを開け、メアルさんに教えてもらった通りに詠唱した。
「貫け」
すると瓶の中の水はものすごいスピードでメアルさんのところに向かった。そしてちょうどメアルさんに触れたとき、その水はその場でビシャっと弾け、地面へと落ちた。
「なんで・・・?」
メアルさんの説明によるとこの水は岩をも砕く。だけどメアルさんのことは砕くことができずに散っていった。もしかしたらメアルさんが膨大な魔力でかき消したのか?そうじゃないとこの状況は説明がつかない。
「これが天命の加護。どんな攻撃もノーダメージ。」
だからあの水でなんともなかったのか。
「次ー、本気でかかってこい!」
これまた急に実技演習が始まる予感。と言うか始まった。
「とりあえず・・・じゃぁ、本気で行きますよ?」
と言っても適性魔法のない俺が本気で行ったところで全く相手にならない。それどころかダメージ無効の相手にどうすればいいか、策なんて全くないが自分が今どれぐらいできるのか、これを機に試すことにした。
「いいよ。」
メアルさんの声を合図に殴りかかろうとした。
「遅い」
しかし、いつの間にか視界の天と地がひっくり返る。メアルさんに投げられたことに気づいたのは地面に叩きつけられた後だった。
「本当に本気?」
「・・・・はい」
「やっぱり君の力じゃないよね。」
「・・・・はい?」
メアルさんはため息をつきながら言った。
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