第9話 さぁね。

 「ルフ・・・・?」


 そこにはどこか雰囲気が違うルフレッドがいた。


 「こいつはスカだな。それに相手するとまずいからね。君は早く別のところに行ったほうがいいよ。」


 ルフが俺を見ながら言った。きっと影に話しているんだろう。


 カタ・・・・カタカタカタ・・!


 影が左手をあげると、棚に並べてあった魔法瓶が一斉に震え出した。ポンッと瓶を蓋していたコルクが飛ぶと中の黒い液体が一斉に影に集まった。

 

 「少し足りないみたいだけど・・・まぁ、また集めておいでよ。」


 ルフが影に向かって言う。また集める?この影は他者から魔力を吸収できるのか?

 影は魔法瓶の中身を全て吸い取るとグッと蹲み込んだ。


 「逃すか!」


 天井突き破って逃げるつもりだろう。瓶一本の魔力で人を昏睡状態にするぐらい魔力を持っているやつだ。地下から地上に出ることぐらいたやすいだろう。


 「残念。」


 逃すまいと影に飛びかかるが、それを妨害したのはルフレッドだった。


 「爆ぜろ」


 ルフレッドが俺の前にかざした左手の平をグッと握った。魔法だ。


 「なるほど、天命の加護か。」

 「正解、よく知ってるな、ルフレッド!」


 顔に向けた正拳をヒョイっと右手ではらわれた。


 「俺は、ルフレッドじゃない。確かに見た目はルフレッドだけど。ルフレッドじゃない。」

 「じゃぁなんだよ?」


 ドーン!!!!


 影が天井を突き破り、飛んだ。


 「外に出れればもういいか。さっきの『じゃぁなんだよ?』の答えだけど。」


 この時、影はもうどうでもよかった。久しぶりに楽しめる、そう思うとワクワクが止まらなかった。


 「さぁね。」


 バタッ


 ルフレッドはそう言うとその場に倒れた。




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