第7話 天使の死体

 「どういうことだ・・・!?」


 ナイフ青年が金髪青年に言った。どうやらクローゼットの中で何かが目覚めたらしい。


 「おい。」


 ナイフ青年に声をかけるとこちらに顔を向けた。こっちを向くと同時に顎に一発お見舞いする。ナイフ青年は脳震盪を起こし、力が弱まり、そのままテーブルの上に倒れ込んだ。


 「え・・・・・」


 金髪青年は俺を初めて認識したようでぽかんとしている。地下で何かが起こったのに加え、仲間が知らん黒いコートにぶん殴られていましたってなったらさすがに思考停止するよな。


 「軍関係者だ。そこを動くな。」

 「お・・・おい、許してくれ、俺はこいつに言われただけで・・・」


 金髪青年はさっきまでの焦りとは別の焦りを浮かべ、両手をあげた。


 「地下に何がある?言わないと罰が重くなるけど。」

 「ち、地下で瓶を作っていたんだ、そ、そそ、その元になる天使の死体が生き返ったんだ。それで地下で今・・・!!」


 バーン!!!!!


 大きな揺れとともに地下から爆音が響く。


 「案内してくれる?なんとかするから。」


 ポケットから取り出したボールペンぐらいの棒をテーブルの上で寝ているナイフ青年の腕に付ける。するとそれは大きな重りへと変わりナイフ青年の腕につく。これが魔法が当たり前になった世界での手錠だ。

 ナイフ青年に手錠をかけるとクローゼットから地下へと向かった。入り口がクローゼットなだけで、中はただ地下へと続く階段あるだけだった。


 「どうやって魔力瓶を作った?」


 地下へと続く階段を降りている途中、先を案内する金髪青年に尋ねた。


 「ああ、禁止だってことは知ってたんだ。でもあいつが、あいつが・・・」

 「どうやって作ったか、を聞いているんだけど。それ言ってくれないと君も相当な罰則を与えなきゃになるけど。」


 罪を逃れようと必死だ。こういう奴の扱いは簡単。こっちが何を聞きたいかを提示し、それを言ってくれれば罪が軽くなるぜという匂わせをする。もちろん罪が重くなることはないが、ぺろっと話してくれる。


 「そ、その天使には血じゃなくて魔力が流れていたんだ。黒いドロドロとした液体状で。それを注射と同じ容量で天使から採取して瓶に詰めただけだ。」


 より強い魔力を持つ人間はその血にも魔力が流れるという。おそらくその天使と呼ばれている奴は相当な魔力を持つ人間、それか魔力を原動力とする何かか。どのみち、血を通じて他者に魔力を譲渡できた人間なんて聞いたこともないし、血がそのまま魔力になっている生物も知らない。さて、この地下にどんな奴が待っているのか。あれた世界じゃなんてもありだな。


 「その天使の死体はどこで拾った?」

 「2ヶ月ぐらい前、この街を出て東へ行ったところにある巨大な森を散策していたら倒れていたんだ。」

 「その天使ってのはどんな形をしてるんだ?」

 「黒くて影のような見た目で仮面をしている。ああ、もうすぐ見えるさ。」


 階段を最後まで降るとそこには12畳ほどの部屋があった。壁一面に並べられた棚には黒い液体の入った瓶がいくつも並べられている。真ん中に立つ2mほどの影は人の形をしていて背中から翼のようなものが生えている。そして不気味に口角が上がった仮面をしている。仮面には口以外に大きく「Ⅲ」と書かれてあり、それ以外は目も鼻もない。

 そしてその影と向き合うように一人、黒いローブをした人が立っている。


 「ルフ・・・・?」


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