第4話 人違い
あれから数時間。あたりはすっかり暗くなり、もう夜になっていた。人が入れ替わり、昼に入ってきたときにいたお客さんはもういない。メアルさんはずっとイチゴミルクを注文し、周りから人がいなくなっては別のテーブルに行き騒ぎ、そのお客が帰ったら店主に絡み、またお客が入ってはお客に絡みを繰り返していた。
「あ、これ?イチゴミルク。え?バカヤロォ、俺は酒が飲めねーんだ!!アハハハハ」
言葉にするとすごく暴言を吐いているが、メアルさんのいるテーブルからは笑い声が絶えなかった。
「仕事する気ねぇーじゃん・・・。」
酒が入っている人よりハイテンションでシラフなメアルさんに呆れ、酒場を出た。
任務の内容はこの街で魔力の異常感知があったため、様子を見てきて欲しいとのことだった。内容的に魔力の異常感知で何かあった時は対処しなきゃいけないんだろう、そんなこと俺にできるか?と自分を疑ったが、イチゴミルクで酔っ払っているメアルさんを見ているのもなかなかしんどい。
「お兄さん、ちょっとそこのお兄さん。」
どうやって異常を見つけようか考えながら歩いていると後ろから声をかけられた。振り向くとそこには金髪で爽やかな笑顔の青年がいた。
「こっちこっち」
「え・・・?」
酒場のキャッチにしては誘い方が独特すぎる。『こっちこっち』と言われてついていく人がいるのだろうか?
戸惑いを隠しきれずにいると青年に腕を掴まれた。
「だからこっちだって。」
手を引かれるまま、路地裏に連れ込まれた。そこには青年の同い年ぐらいの男が木箱の上に座りタバコを吸っている。
「さぁ、ようこそ。ここですよ。」
青年は俺を木箱の上に座らせるとそう言った。
「早速話を始めよう、1本で金貨5枚。これがこちらの条件だ。」
木箱に座った男が口からタバコの煙を吐きながら言う。
「1本で金貨5枚・・・?なんのことだ?」
「魔力瓶の話さ。あんたウチから買いてぇって言ってた貴族様じゃねーのか?」
俺は貴族なんかじゃない。いや、記憶をなくす前は貴族だったのかもしれないが、今はそうじゃない。それどころか、お金の話が出て気づいたが、俺は銅貨一枚も持っていない。
「魔力瓶・・・・?なんだそれ?」
それを聞いて木箱に座った男が吸っていたタバコを投げ捨てた。
ゴン・・・!!
男がタバコを投げ捨てたと同時ぐらいに脳の後ろあたりから鈍い痛みを感じた。
「こいつスカじゃねーか。」
「情報通りだったんですけどねー。」
「まぁ、荷ぐるみ剥がして金目のもの拝借すりゃ・・・」
二人がローブを剥がし、身につけているものを漁り出した。まぁ金目のものなんて何もないんですけどね。
「フクロウのマーク・・・こいつ軍の関係者ですよ」
「金目のもの取ったらあの部屋に入れておけ。こいつも使えるかもしれねぇ。」
薄れゆく意識とともに二人の声がだんだん遠のいていった。
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