第3話 砂の国、カルサハ
昨日は久しぶりにベッドで寝た。今朝はベッドで眠るってこんなにも幸せなことなのかと思い起床した。リビングに向かうとメアルさんは何やら準備をしていた。
「おはようございます。」
「よ!今日からお前は・・・ルフだ!よろしくな!」
朝からハイテンションなメアルさんに急にあだ名を付けられた。ハイテンションな大人ってこんなにもめんどくさいのか。それともこの人がめんどくさいだけなのか。
「はい、これ」
「これは・・・?」
「これは?って着替えだよ。ルフのローブ。魔法使いって言ったらやっぱりローブでしょ!サイズ合うかわからないから着てみて」
メアルさんから黒いローブを手渡される。とりあえずきてみるとサイズはぴったりで胸の内側に魔法軍特別隊所属の証であるフクロウのマークが描いてある。
「これって?」
「そう、魔法軍の制服みたいなもん。今日から君は魔法軍、第三特別隊だ!」
魔法軍とはどこかの国に所属している軍ではない、例えていうなら国連のようなもので世界の安全を守るために組織されている。魔法軍にはいくつか部隊がある。大まかにいうと各国の治安を守る治安部隊、魔法生物から国を守る魔法部隊、そして国や世界の緊急時にのみ出動する特別隊がある。
「勝手に俺を軍の特別隊になんか入れていいんですか!?」
「いいよいいよ、隊員に関しては自由にしていいって言われているし。それに木を隠すなら森の中、犯罪者隠すなら軍の中ってね。」
流石に適当すぎないか?っていうか犯罪者を軍の中に隠すなよ。
「第三特別隊って他に誰がいるんですか?」
「俺とルフを除いてあと二人いるよ。分け合って全員別々のところにいるけど。」
「それは任務とかで?」
「まぁそんな感じ。第三特別隊はみんな強いからね〜。個人宛に任務がくることが多いんだよね。そして・・・」
メアルさんは黒いトレンチコートとハットを身につけ、一枚の紙を俺に見せた。
「なんと俺らにも任務が来ましたー!ってことで行きまーす。」
紙の内容を読む前に、メアルさんがポケットから青く半透明のキューブを出すとそのキューブは光り輝いた。
そんなこんなで今、砂の国、カルサハに来ている。どうやら少しずれたところにワープしてきたらしい。暑すぎてフードを取ると日差しが肌を刺してくるほど日差しが強い中、砂の海を歩いている。
「メアルさん、暑くないんですか?」
メアルさんはこの環境でも真っ黒のコート、真っ黒のハットでポケットに手を突っ込みながら歩いている。見ているだけで暑い格好だか、本人は息を切らすことも、暑いと愚痴をこぼすこともなく歩いている。
「ん?家にいるとき以外はこの格好だからね。暑くないよ。」
いつもこの格好しているのか。だからと言ってこの暑さが暑くない理由はない。
「俺、他の人と違うから暑さとか寒さとかもふっくるめて身体へのダメージは基本ないんだよね。」
メアルさんはボトルに入った水をくれた。せめてこういう過酷な環境に来るときは水とかいろいろ準備する時間が欲しいけど、暑さとか寒さもこの人には関係ないんだったら、暑さを感じる俺のことは考えられないか。と思いながら水を飲む。
「でもちゃんと人のことを考えているからこうして水持ってきているんだよ?」
心を読まれたかのようにメアルさんが補足してくる。人のこと考えているなら起きてからすぐにワープしないでよ・・。
お昼頃まで歩いてやっと街についた。暑さや疲労でもうヘトヘト。
「さぁ、聞き込みだ!」
街に着くや否やメアルさんは張り切って近くの酒場に入っていった。
「好きなの飲んでいいよ。」
席につくや否やメアルさんはそう言った。
「とりあえず水を・・・。」
目の前にジョッキで水とイチゴミルクがドンッと置かれた。俺は置かれた水を一気に飲み干した。暑く、疲れた中で飲んだこの水は人生で一番美味しい水だった。
「任務ってどんなのですか?」
俺の質問に対してメアルさんは任務の書かれた紙を「はい」と置いてって別のテーブルへと行った。
任務の内容はこの街で魔力の異常感知したため調査してこいとのこと。ってかメアルさん聞き込みとか言いながらただお酒が飲みたいだけじゃ・・・?まだイチゴミルクしか飲んでいないようだが、酔っているのか隣のテーブルでワイワイしている。
初任務で聞き込みなんて言っても何をしていいかわからない。俺はただイチゴミルクで酔っ払っているメアルさんをただただ眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます