揺れる

「さて」


 行くか。そろそろ熱くなってきた。

 燃え盛るビル。そして、そこからの都市の眺め。地上85階。


 飛び出す。

 カメラに映りたくないので、降下距離ぎりぎりまでパラシュートは出さない。

 後ろで、みしみしという音。わたしが飛び降りたのが、どうやら最後のきっかけになったらしい。ビルが、倒れてくる。


「あれ?」


 わたしのほうに倒れてきている。

 仕方がないので、パラシュートを開く。黒いパラシュートだけど、電子機器をかいくぐるために反射加工が施してあった。つまり、目視だと見つかる確率がある。


 適当に風を受け、倒れてくるビルの、火の前後にある風も利用する。

 そこそこ、ロンググライディングできそうだった。


「目指してみるか」


 小高い丘近くまで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

S.T.2 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る