第25話 物語の栞 8 - 2(オーストリア編)

□シャルロッテ・フクス伯爵夫人→マリア・テレジアたちに『マミー』と慕われている、大公女殿下たちの教育係。(26歳)本当は、もっと年上で、マリア・テレジアの専属? 教育係でしたが、このお話では、マリアンナも担当していて、ちょくちょく、マリアンナのせいで、カール6世に、ちょくちょく、小言を言われたりする損な役回り。


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□オイゲン公→プリンツ・オイゲン(オイゲン・フランツ・フォン・サヴォイエン=カリグナン)サボイの王子(58歳)


・芸術を愛するオーストリアの有能な将軍で政治家、帝国軍事参議会議長にして、竜騎兵連隊隊長。


・実父はフランス王ルイ14世とのうわさ。


・紆余曲折の末、マリア・テレジアの祖父、レオポルト1世の代から、オーストリアに仕官している英雄。オイゲン公の公は、公爵ではなく、。プリンツは王子の意味。


・ウィーンでは自分の宮殿、ヴェルベデーレ宮殿(宮殿にしては小さい)に住んでいる。四国にある日本の会社が模した建物であったために、マリア・テレジア(改)は、どこかで見たような? と、既視感を覚えているが、こちらが本家。実は「冬の宮殿」など、数多くの不動産も持っている。


・若い頃、一瞬神父をしていたが、実は信心深くはない。いくつかの修道院からの副収入がある。結婚すると、この収入はボッシュートされるので、結婚がなんとなく先延ばしにしているとのウワサ。そして、いまだ独身ながら、ウィーンに彼女がいるとのウワサもある。


・気管支炎なのに、嗅ぎタバコを愛している。


・語学力→イタリア語★★★★★(流暢)、フランス語★★★★★(一番得意、流暢)、ラテン語★★(苦手&あやしい)、ドイツ語★★★(読むことや話すことはできるが、流暢に書けるほどではない。)


・数学好き。オイゲンコレクションと呼ばれるといわれのある貴重な本? の全集を持っている。現在はガレッリに貸出中。


・レオポルト1世の時代にその活躍により、ダイヤモンドで装飾された皇帝のキラキラ自画像をたまわっていたが、カール6世にも賜ったので、Wで皇帝自画像を所持。


・欧州の影の皇帝と呼ばれている。


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□ザヴォイエン公子→エマヌエル・トーマス・フォン・ザヴォイエン、オイゲン公の亡くなった兄の息子、甥(38歳)


・文武両道にして、有能な皇帝軍陸軍将校。『通称:鉄血将校』伯爵位を所持。竜騎兵連隊副隊長であるが、実質的には隊長。


・息子の名前は、尊敬する叔父にあやかり、同じくオイゲン。妻はリヒテンシュタイン侯(アダム富裕侯)の五女、マリア・テレジア・アンナ・フェリーツィタス(マリア・テレジアと同名なので、通称はフェリスになっています)


金羊毛騎士団Order of the Golden Fleece( ゴールデン・フリース騎士団)rightの騎士にして、こちらも実質的な団長。天然痘で早くに死亡予定であったが、マリア・テレジアとガレッリの計略で、健康そのもの。


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□マリア・テレジア・アンナ・フェリーツィタス(マリア・テレジアと同名なので、通称はフェリス)→ザヴォイエン公子の妻にして、時を超えた姫君と呼ばれる美貌の伯爵夫人。オーストリア宮廷の女官長。リヒテンシュタイン侯の娘。実は一騎当千の実力者。亡き父、最後の功労により、女伯爵位を所持している。


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□オイゲンⅡ(オイゲン公にあやかり同じ名前)→ザヴォイエン公子の息子。マリア・テレジアの護衛騎士。ややこしいので、マリア・テレジアがつけたあだ名は、プリンツ。


・本名→ヨハネス・フランツ・オイゲン・フォン・ザヴォイエン。


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□オイゲンⅢ→ザヴォイエン公子の息子2(架空です)→将来は、母の爵位を継承する予定。普段はアダムと呼ばれている。


・本名→ヨハン・アダム・オイゲン・フォン・ザヴォイエン。2歳。


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□ガレッリ→マリア・テレジアに押しつけられたエステルハージ侯爵の宮殿から、現在はオイゲン家に引っ越している。オイゲン家に関係する宮殿などを放浪する居候。いまのところは、オイゲンコレクションに夢中な様子?


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□マールバラ公、ジョン・チャーチル→スペイン継承戦争のイングランド軍司令官にして、数年前にあの世に旅立ったはずの、オイゲン公の親友。


・仮死状態になり、葬儀の後、生き埋めのまま、あの世に旅立つところを奇跡的に生還。


・現在はマールバラ公の腹違いの庶子“ウィンストン・ドレーク(母方の性)”として、イギリスからオーストリアまで、アチラコチラの旅を、満喫したのちに、オイゲン家にこれまた居候。(マリア・テレジアは秘密を知っている。)


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□〈故人〉リヒテンシュタイン侯、ヨハン・アダム・アンドレアス→アダム富裕侯とあだ名されたお金持ち。ハンガリー議会、皇帝政府委員だった。


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□〈故人〉レオポルト1世→マリア・テレジアの祖父。ハプスブルク家第10代神聖ローマ帝国皇帝だった。


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□エヴァ→マリア・テレジアの腹心中の腹心である女官。テレジアのためなら、罪なき善人を消去することも厭わない覚悟の持ち主。


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□マティアス→エヴァの兄、語学にも優れ、ヨーロッパ最速の筆記速度を誇る宮殿の筆写室長。喫茶「ドナウの夕焼け」の常連客。妹と一緒に、影でテレジアを支えている。


・語学力→イタリア語★★★★★(流暢)、フランス語★★★★★(流暢)、ラテン語★★★★★(流暢)、ドイツ語★★★★★(流暢)、スペイン語★★★★★(流暢)、ハンガリー語★★★★★(流暢)



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□宮廷付ユダヤ人、ベッテルハイム→マリア・テレジアに、定住の地を提示され、彼女の将来性にかけて、多額の資金を用立てている。


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□エルラッハ→宮廷お抱えの建築家にして、いかに安く豪華にと、いつも見積りと材料の調達に、頭を悩ませていたが、ハプスブルク家の懐具合が良くなり、いまでは悩みが減った様子で、晴れ晴れとした表情で、鋭意、様々な宮殿や離宮を改装中。


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□〈故人〉ヨーゼフ1世→カール6世の兄、ハプスブルク家第11代神聖ローマ帝国皇帝だった。


・イギリスに借りた大借金を残してこの世を去った皇帝。


・このお話では、借金は弟のカール6世が、全額キャッシュで返済。逆に絶賛貸し出し中。


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〈 小話:プリンツオイゲン一代記:2 〉


 それから3年、1683年になると、彼は、神父としての生活のかたわら、ひたすら読書と数学に励み、社会へ打って出るために、最低限の知識を手に入れたと判断すると、「もう神父はやめま——す!」そんな宣言をして周囲を驚かせ、てっぺんのツルツルも消える頃、流行のカツラを被り、それに小麦粉を振って、身なりを整え、意気揚々とフランス軍に入隊しようと、フランス軍の扉を叩いたが、人生とは厳しいもので、太陽王ルイ14世le Roi Soleilには、キッパリ、ハッキリ断られ、オイゲンの人生における、最初の軍人としての仕官への道、つまり就職活動? は、こっぱみじんに砕けて終了していた。


 見栄え重視の太陽王は、背も低く不細工なオイゲンを、ひょっとしたら、自分の息子かと思うと、とても見ていられなかったし、そうでなくても、見栄えの悪いオイゲンに、宮殿をウロウロされたくなかった。


「え、うそ、そんな……やっぱり、実のお父さまじゃなかった? それか母の悪行の祟り?」


 オイゲンは、そんなことをブツブツ呟きながら、ぼんやりとパリの街に立ち尽くし、どぶ川、もとい、セーヌ川をながめていると、心配してあとをつけていた、親友の「プリンツ・コンティ」こと、太陽王もお気に入りのイケメン、フランス王子、「ルイ・アルマン」に、いつの間にか、彼の持つ休憩用の目立たない屋敷へと連れて行かれて、コーヒーを出され、不幸な知らせでもあったが、耳よりの情報を教えてもらっていた。


「トルコと戦争中のオーストリアで、仕官していた兄のルイ・ジュリアスが戦死した? え? 本当に?」

「間違いなく、そうらしいよ……お悔やみ申し上げるざんす……」


 オイゲンの兄のひとりは、オーストリアに渡り、皇帝レオポルト1世に仕官し、連隊長になって、トルコとの戦争に参加していたのである。


「そっか……戦死……」

「でもさ、ほら、ピンチはチャンスざんすよ? この際、フランスがダメなら、オーストリアがあるじゃないかなって? オーストリアなら、もともと随時絶賛軍人募集中だし、ツテのある君は、絶対に好待遇で仕官できるはず! かなり危ないっちゃ――危ないけどね……なんせオスマントルコと戦争中ざますからね――」

「…………!」


 そう言われて、オイゲンは、オーストリアの亡き兄はもとより、神聖ローマ帝国皇帝軍の将軍のひとりでもある従兄弟のバーデン辺境伯、そして、うっすい親戚のご縁のある、同じくオーストリア陣営、バイエルン選帝侯、マクシミリアン・エマヌエルのことも、芋づる式に思い出したのだ。


 暗く閉ざされようとしていた人生の先に、一筋の光が見えた気がした。


「僕もご一緒するざんすよ? アレコレうるさく言われるだけのフランスなんて、もうあきあき!」

「え? 王族の君が言う? と言うか、勝手にオーストリアに行って大丈夫!?」

「大丈夫、大丈夫!」


『ホントかな……?』


 そして、若きオイゲンは、プリンツ・コンティと一緒に、太陽王ルイ14世le Roi Soleilに許可もとらず、こっそりパリを旅立ったのであった。


 まだ二十歳、彼の未来は始まったばかりである。


【時代はマリア・テレジアが六歳の頃に戻る】


「え――それからそれから!?」

「今日はここまで! 殿下、また明日にいたしましょう。また課題が終わっていたら、続きも話して差し上げますよ?」

「また、いいところで終わるのね……」


 オイゲン公は、そう言うと、再び窓からロープを伝って、姿を消していた。

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