第29話 物語の栞 8 - 5(オーストリア陣営編)

□欧州二大傭兵集団(※存在自体、所属する人物全体がフィクションです)


①君主を持たぬ無国籍国家の師団、凶鳥/オワゾーoiseau→なくてはならないフランスの常備傭兵師団であったが、ケチケチ枢機卿フルリーの台頭により、お払い箱になり、フランツがロートリンゲン公国へ雇い入れたのちに、マリア・テレジアへ、リボンをかけて(経費フランツ持ち出し)、プレゼントにされた。


□師団長→アンリ・ティエリー・ポリニャック。

 いまだにロングソードを使うので、副官にバカにされている。


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□副官ガブリエル→マスケット銃の名手。剣術はまったく役に立たないレベル。


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②甲冑を着た修道士の師団/ヴェリタVerità/真実、真理→普段はドイツのどこか深い森で暮らしている。カトリックの某修道院を中心にした厳格な宗教的武装師団で、バチカンとも距離を置いている。


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□師団長→アルフォンソ。未来のマリア・テレジアの金羊毛騎士団のleftNo.2。実はカルロス2世の最後の後継者であったが、周囲には秘密にしている。信心深く大いに役に立っているが、ハプスブルク家に、マリア・テレジア(改)にとって、巨大な爆弾を抱えた存在でもある。


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□コンラート・フォン・ヴァレンシュタイン→16歳。未来のマリア・テレジアの金羊毛騎士団leftNo.3 。エステルハージ侯爵預かり。かの有名な『アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン』の子孫。(もちろん架空)


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□ヨーゼフ・アルフレート・フォン・ライヒェンシュタイン→10歳。未来のマリア・テレジアの金羊毛騎士団のleftNo.4。マリア・テレジアの母、皇后リースルの乳母を祖母に持つ、幼きライヒェンシュタイン子爵家の当主。現在はヴェリタVeritàの修道院で、密かに療養中。(もちろん架空)


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『その他、登場人物や団体説明』


□実在していながら、架空設定の海に浸かる、金羊毛騎士団Order of the Golden Fleece( ゴールデン・フリース騎士団、rightleftは、ありません)


・異教徒からカトリックを守る目的で設立されたこの輝かしい騎士団は、実は、rightleftのふたつの組織から編成されている。


rightは、いわゆる王侯貴族、名門出身者の名誉職的な表向きの騎士団であり、leftは、荒事もこなす日の当たることのない、ハプスブルク家当主のためだけに存在する隠された騎士団。rightleftの存在すら、ほとんどの人物が知らない。


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□ウィーンっ子→オーストリアの首都、ウィーンに住む人々。基本的に派手好きで、フランスのヴェルサイユに対抗意識を持っている。


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『その他登場するオーストリアの建物や地域』


□ホーフブルク宮殿→マリア・テレジアたちが、主に暮らしているウィーンの宮殿。隙間風だらけの豪華な掘っ立て小屋と、マリア・テレジアに、酷評されていたが、いまではピカピカに改装され、まだまだ改装中。


・頑丈な星形の城壁で囲まれたウィーンの中にある。


・ほとんどの宮廷人や使用人たち(約二万人)は、近所の家に部屋を借りて、徒歩通勤。


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□ファヴリータ宮殿→ホーフブルク宮殿から遠くないところにある。ここの巨大な温室に王侯貴族が集まり、『お店屋さんごっこ』と呼ばれる仮装園遊会が、毎年2月に開かれる。バナナが実り温泉が湧いている。(※温泉など施設はフィクションです。)


□シェーンブルン宮殿→ウィーンにあるハプスブルクの離宮。改装中。


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□喫茶店『ドナウの夕焼け』→王宮から歩いてすぐ、コールマルクト通りに面した、首都でも有数の規模を誇る喫茶店。おいしいコーヒーやザッハー・トルテなどのケーキ類や軽食も充実、宮殿の人々もひいきにしている評判のおいしさ。ビリヤード施設もあり、ピアノなどの生演奏もやっています。『金・銀・銅』のフロアで席料が違う。

・全席喫煙可能。

・店主は、コールマルクト通り商店街の会長。

・実は店主は、ウィーンの城塞内にあるいくつかの地下礼拝堂などの奥に、籠城戦に備えた貯蔵施設を管理している。


・最近、シュレージエンに、二号店があることが判明。


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□ブラウン工房→ウィーンでも有名な、高級フルートの工房。五人の子持ちの夫婦が開いているお店。


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□バーデン→オーストリアの誇る、温泉があるリゾート保養地。


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□『エッペンドルフのアルラウネ』(もとはルドルフ二世のコレクション。アルラウネは、ドイツ語のマンドラゴラの異名。)→今現在はウィーン美術史美術館所蔵。もちろん、ニセマンドラゴラです。


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□『マリオンとトルダキアス』の雄雌一対とのいわれのあるマンドラゴラ→今現在はオーストリア国立図書館に所蔵されているそうです。


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□『マリア・テレジア型シャンデリア』→少し時代を速めてベーメン(ボヘミア)に登場。クリスタルガラスで金属のアームを覆い、その両端を花を模したガラスの飾りで留め、まるで宝石からこぼれるような輝きを放つ豪華なデザインで、その反射性から、いままでのシャンデリアよりも、ロウソクにかかる費用を大幅に削減できる素敵な一品。


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〈 小話:プリンツオイゲン一代記:5 〉


 、未来の「欧州の影の皇帝」を、知らぬうちに、無料で手に入れることに成功した、神聖ローマ帝国皇帝レオポルト1世は、オイゲンと同じく、もともとは、兄のフェルディナント4世が家業? を継いで、自分は、聖職者になる予定であったので、皇帝になってからも、実に信心深く、どのくらい信心深いかと言えば「堅苦しすぎて嫌になるだがや!」陰でバチカンの特使が、ブツクサ言うくらいであった。


 そして、若きオイゲンに「外見なんて気にするな!」そう言ったのは、自身もなかなかに恵まれない風貌を、なんとか風変りな衣装で、ごまかしていたからかもしれない。


 しかしながら、彼は、真面目で勤勉な男であった。

 それであっても、いや、そんな性格であるからこそ、支配者としての資質を持ち合わせることがった。


 その最大かつ致命的な欠点は、決して拭い去ることはできず、教会と貴族の協力の元、なんとかかんとか、必死に帝国を維持していた。


 彼には、神の試練とばかりに、無理難題ばかりが、次々と降りかかり、なんとか取り繕っていたフランスとの関係も、スペイン最後のハプスブルク家当主、カルロス2世が亡くなってから、悪化の一途をたどり、なんだかんだあって、太陽王ルイ14世le Roi Soleilのせいで、皇帝は、ウィーンから、どんぶらどんぶらと欧州を流れ(逃げて)プラハまで流れ着いたが、そこも追い出されてしまう、そんな状態であった。


 もう、なにもかも、悪化する一方、まさかまさかの転落劇……。

 しかし、そこに、信心深い皇帝への、神の思し召しか、ようやく試練から抜け出すきざし、大転換の空気が流れ込む。


 太陽王ルイ14世le Roi Soleilが、欲をかき過ぎて、この時代では、「オスマントルコ」と手を結ぶという暴挙に及んだのである。これに激怒したドイツ諸侯、そしてポーランド王までも、皇帝と、次々と協定や同盟を結んでゆく。


 そしてそれらの協定や同盟関係は、1683年の夏、とうとうオスマントルコにウィーンが包囲されたときに、オーストリアと皇帝を救うのである。


 そのとき、オイゲンは、どうしていたかといえば、彼の前には、オスマントルコとの「5年戦争」が待ち受けていた。


 翌年にはポーランド、ヴェネチアと皇帝の間に、「対トルコ神聖同盟」が結ばれていた。


 その頃のオイゲンといえば、まだまだ中間管理職的立場であったので、前線で、塹壕の中で、はたまた、どこかの戦場で、びしょ濡れになったり、泥水に浸して、なんとかふやかした「カチカチのパン」を咥えながら、戦場を走り回ったりしていたが、なんとか、「プリンツ・コンティ」とも再会し、その後、長きに渡り、もうひとりの親友であり右腕ともなる、フランス貴族ながら、皇帝に仕えたために、太陽王ルイ14世le Roi Soleilの大激怒を買い、爵位をはく奪されていた、「コメルシー公子、シャルル・フランソワ」と出会ったり、様々なその後の人的財産を、着実に築いていた。


 このときの直属の上級司令官が、フランツの祖父、のちに英雄とたたえられ、マリア・テレジアの時代にも語り継がれるロートリンゲン公、「カール・フォン・ロートリンゲン」である。


 彼らは、1684年の夏、ハンガリーにできていたオスマントルコの拠点、ブダにいたるドナウ川左岸全体を支配下におくと、勢いに乗って、約40キロほど北西に当たるエステルゴムで、10万の兵を擁して、オスマントルコを撃破していた。


【時代はマリア・テレジアが六歳の頃に戻る】


「プリンツ・コンティ! でも、コメルシー公子、シャルル・フランソワ……? そんな人は知らないわ。是非会いたいけれど……あと、フランツのお祖父さま、当時のロートリンゲン公は、本当にすごかったのね!」

「いやいや、コメルシー公子は、スペイン継承戦争で、戦死しておりますので、それは無理な話ですよ……あと、ロートリンゲン公、ここだけの話ですが、実は、大失敗もしておりましたけどね。まあ、それは、なかったことになっておりますな。それでは、また次回!」

「ロートリンゲン公……そうなのね、英雄にも失敗はあったのね。コメルシー公子の後継ぎは? 息子とか娘は、まだオーストリアにいるの?」

「いやいや、彼は生涯独身で、従兄弟も戦死しております……甥がいて、家族がある自分は幸運ですよ……」

「そうね、オイゲン公には、素敵な家族がいるんだもの!……コメルシー公子は残念ね……また、続きを教えてね!」

「はい、大公女殿下……」


 オイゲン公は、そう言うと、再び窓からロープを伝って、姿を消していた。


「やっぱり、アルフォンソのことは、少し心配というか、心配に心配を重ねてもいいくらいね……しっかり、がっつり、わたしのモノにしておかなきゃ!」


 オイゲン公が消えてから、マリア・テレジアは、ベッドに入らず、秘められた最後のスペイン・ハプスブルク家の跡継ぎであった「アルフォンソ」に、いつもの小まめな、それでいて「気遣い溢れる幼い大公女からのお便り」を書いていた。

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