第27話 物語の栞 8- 4(ハンガリー編)
『ハプスブルク帝国/ハンガリー帝国領関係者』(この先も、かなりバッサリ行くと思います。人が増え続けてしまい……)
□エステルハージ侯爵→パウル・エステルハージ(23歳)ハンガリー帝国の大貴族。現代にも続く、有名なワインを製造する、ワイナリーの所有者でもある。幼少期から、戦場で育ったフランツと真逆で、一騎当千の騎手であり、司令官としても優れた存在ではあるが、サイフのヒモは緩みがち?
・ハンガリーの貴族を取り仕切るハンガリーの領主的存在だが、一応家督を譲られたものの、マジャールの王と呼ばれる祖父で先代、エステルハージ大侯爵(尊称)(90歳)は存命中なので、まだまだ頭が上がらないが、気楽ではある身分。
・ハンガリーのヴェルサイユ宮殿と呼ばれるエステルハージ宮殿を所有する誇り高きマジャール人。
・ウィーンにも宮殿を持っている。
・はしばみ色の鋭い瞳、ほりの深い顔、冬になってもとれぬ日焼けした肌、カラスの濡れ羽色の髪は真っ直ぐで、あごのラインで切りそろえられている。身長185cm
・ハンガリーの騎兵、フサール→ヨーロッパ最速を誇る軽騎兵を保有。
・未来のマリア・テレジアの
・マリア・テレジアがつけた秘密のあだ名→貯金箱。
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□フランツ・レオポルト・フォン・ナーダシュディ・アウフ・フォガラス(17歳)→ハンガリー貴族、フォガラス伯爵家の若き当主。エステルハージ侯爵のツレ①(ご友人)
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□カール・ヨーゼフ・バッチャーニ(28歳)→ハンガリー貴族、バッチャーニ伯爵。エステルハージ侯爵のツレ②(ご友人)
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〈 小話:プリンツオイゲン一代記:4 〉
パリをあとにしてから、約1か月、アルマンと別れたオイゲンは、ドイツ南東部、バイエルンのパッサウにたどり着いていた。彼は、従兄弟のバーデン辺境伯ツテをたどり、彼の友人をたずねていたのである。
バーデン辺境伯は、オーストリアの帝国軍事参議会議長、つまりこのときは、未来のオイゲンの地位にあり、神聖ローマ帝国皇帝レオポルト1世、(カール6世の父)オーストリア大公の宮廷において、「反フランス派」の指導者でもあった。
この派閥には、皇帝の信頼が非常に厚い、スペイン大使のボルゴマネーロも参加しており、この二人がオイゲンの実質的な、オーストリアでの庇護者になってくれる予定で、その証拠に、ボルゴマネーロは、オイゲンの希望通り、すぐに皇帝との面会を取り付けてくれた。
「すぐに皇帝陛下へのお目通り! やった! ありがとう従兄弟! そして、その仲間の人!」
オイゲンは大いに喜んだが、一抹の不安も抱えていた。フランス軍入隊希望のときの「門前払い事件」である……。
「せめて、もう少し、かかとの高い靴を用意して、少しでも身長が高く見えた方が、いいのかなぁ?」
「どうかしたの?」
「あのそれが……かくかくしかじかで……」
「なんだなんだ、そんなこと気にするなよ! あ、でもさ、フランス系よりも、うちはイタリア系の方が、断然聞こえがいいから、イタリアの血筋を、前面的に、くぐっと前に、押し出した方がいいと思うよ!?」
「イタリア、イタリア!……よし、両親はイタリア系! 大丈夫! 今度こそ大丈夫!」
「その勢いだオイゲン!」
神聖ローマ帝国軍では、イタリア系出身の将軍というのは、あるある話であった。そんなこんなで、彼は自分を、「フランスを見限った、フランス将校の息子であった青年貴族」ではなく、父が、「イタリア王国の王家、サヴォイエン=カリグナン(サヴォイア=カリニャーノ)家」の出自であり、自身もサボイの公子にあたることを、前面に押し出して、無事に皇帝軍に仕官することに成功し、以後のオイゲンは、イタリア系を全面に押し出して、人生を送ることになる。
オイゲンと皇帝との謁見は、順調そのもので、手持ちの財産といえば、コンティが最後にくれた餞別、残り僅かになってしまった路銀と、質に入れている自身の指輪で用立てた小銭だったので、実は、心も懐もかなり心細かったが、なんとかなりそうであった。
「うんうん、大いに期待しているよ! 顔!? 身長!? そんなもん気にするな! うちは、見栄っ張りのフランスとは違って、実力主義だ! 頑張ってくれたまえ!」
「陛下……一生ついて行きます!!」
オイゲンにお目通りしてくれた皇帝は、そんな優しい言葉をかけてくれ、そんな風にオイゲンは、大いに感動したものである。しかしながら、あとで従兄弟とかわした言葉で、その感動は、すぐに消えかけていた。
「え? ボランティア……?」
「いやほら、いま、皇帝軍は、赤字も赤字、絶賛金欠中でさ……お賃金を出す余裕がね……」
「でも、それじゃあ、どうやって食べて行ったらいいの!? もう指輪も質に入れちゃったのに!?」
「う――ん、わたしがなんとかする……」
従兄弟のバーデン辺境伯は、とりあえず彼の元で従軍することになったオイゲンが、ウィーン解放のときの活躍で、それから数か月後に、竜騎兵の連隊長になって、ひとまずの「お賃金」が出るまで、なにかと面倒をみてくれ、質屋から指輪も引き取ってきてくれた。
「今日もパンと、豆のスープか……修道院で慣れてはいるけど、いいかげん嫌になるなぁ、早く活躍しなきゃ……」
【時代はマリア・テレジアが六歳の頃に戻る】
「ボ、ボランティア……なんだか、本当にごめんなさい……ウチときたら、そんな安月給以下で……」
「いやいや、すぐに才能を発揮して、竜騎兵の連隊長になりましたので、大丈夫ですよ! 鉄は熱いうちに打て! そう言いますからな! それでは、また次回!」
「ものすごいレアカード(オイゲン公)をタダで手に入れた強運……さすがハプスブルク……」
「なにか言いましたかな?」
「う、ううん! なんでもないわ! おやすみなさい! また、続きを教えてね!」
「はい、大公女殿下……」
オイゲン公は、そう言うと、再び窓からロープを伝って、姿を消していた。
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