第6話 「御社でやりたい仕事は・・・」

5月も半ばを超えて、残すところも最終面接が増えてきた。


最終面接なんて雑談程度で終わりだという声もあるが、昨今の時代でその可能性はかなり低いのではないんじゃないかと思う。

理由は最終面接だけ、本社で対面面接をする企業が増えているからだ。

いくらリモートでも人間性がわかるとはいえ、実際に会うとまた人の印象は変わる。


結局俺が最終面接まで残った企業は3つだった。

どの企業もやっている事、すなわち業種という点では全部バラバラだ。だけど俺の持つ軸とはどの企業も一致している。


この会社じゃなきゃ叶わないことなんだ。

過去の俺ならそう思っていた。だけど世の中はそんな平面じゃなかった。

世の中にはいろんな会社があって、その中で自分たちの正義のために働いている。

だから俺たちも俺たちなりの正義を持って動かなくてはいけない。


正義を作れ。

頑張りたい理由は無くなっても頑張らなくてはいけない理由を見つけろ。

誰かに就活を伝えたいと欲した時、俺はおそらくそう言うだろう。


俺の場合は生きること。

それもなるべく自分が生きやすい条件でだ。


正解ではないかもしれないこの考え方だが今の俺を作っている。



***


「へ〜、いいね。もう少し話聞いてもいいかな?」


『もちろんです!』


最終面接も終盤。この面接が終われば俺の就活も終わりだ。


「・・・ちなみに、あなたが弊社でやりたい仕事はありますか?」


俺は心の中で少し笑った。そして深く深呼吸をした。


『はい!もちろんです!私は・・・』


今の俺は本気で笑えているだろうか、過去の自分に自信を持って正直に笑えるだろうか、いや、きっと笑えるはずだ。


後悔しないしない選択肢を歩んでいると自信を持っていえるからだ。



来年の春から俺は社会人になる。

俺たちが入る世界は必ずしも希望に満ちているわけではないだろう。他者と競い合い、環境に左右され、大人になるたびに自分はいなくなる。

社会から離脱する人間だっているだろう。そして自分がそれにはならないという保証なんてない。


何もかもが自己責任。

これが今までと何よりも違う点ではないだろうか。


だけど俺は少なくとも進学の時より晴れやかな気持ちだ。


自分で操作していく人生に責任を持てるから。


そして何より今の俺には・・・。



『この会社でやりたいことがあるから。』



 〜fin〜

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「弊社でやりたい仕事はなんですか?」 Kさん @kocoa568

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