その後

 うちの大学は往路十三位で、総合成績は大学新記録の七位だった。陸上競技部が掲げるスローガン通り、歴史を変えた。

 陸上競技部の快挙を祝う横断幕が、大学の棟と棟を繋ぐ二階の渡り廊下に展示された。


 大学ホールにて祝勝会が開かれた。箱根駅伝応援ボランティアの一員としてSちゃんと私は招かれた。我々は知り合いもおらず、選手がユニフォーム、大人がスーツで正装するなか完全な普段着で来た。二人ぼっち状態だった。

「おいしいね……」「おいしいですね」とささやき合いながら、立食パーティーでたくさん食べて、誰とも話すこともなく途中で退散した。

 人見知りの快進撃はここまでのようだった。


 十区で応援した四年生の選手とも接することはなく、四年生たちは卒業した。

 結局のところ、就職活動で箱根駅伝ボランティアのことは話さなかった。二日間は短かったし、リーダーのような役割もしなかった。ただの個人的な思い出となった。でもそれでよかった。

 この個人的な思い出が、いつまでも美しく残っている。

 陸上競技部のOBの何人かは社会人で陸上を続けている。箱根駅伝の前日のニューイヤー駅伝で活躍する選手もいる。

 そのため、ニューイヤー駅伝と箱根駅伝の三日間を手に汗を握って、テレビの前で応援することがある。

 まったく最高のお正月だ。


 大学を卒業してからも、Sちゃんとは付き合いが続いている。

 私とSちゃんを繋ぐものに、箱根駅伝がまぎれもなく入っている。

 小動物系大学マスコットの中の人も、ともに脅かされた友達も、陸上競技部の人たちも、沿道で応援に参加してくれた人たちも、ゆるくゆるく関連しながら生きている。

 

 

 コロナ禍を乗り越えて、沿道での応援が解禁された。

 今年はどうしよう。

 思い切って現地で応援するのもいいかなあ。

 でも寒いしなあ。

 私は家でのほほんと年始に思いを馳せる。

 

 また箱根駅伝が始まる。

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箱根駅伝応援ボランティア 泉野帳 @izuminuma

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