BLUE MIRAGE

波 七海

BLUE MIRAGE

独白調な物語?です。詞的な感じになった。

エンタメかと言われると分かりませんが。

単なる自己満足かも知れません。

こんなの書いた経験がなかったので、すごく恥ずかしいんですがそれは……。

まぁそんな感じの作品です。


――――――――――― 


 それは突然なんかじゃなかった。

 一目惚れなんて言うものでもなかった。


 かれたのは君の笑顔。

 まぶしいほどに明るい君の笑顔。


 毎日顔を合わせ、とりとめのない話をしたね。


 昨日は何をしていたの?

 今回のテストはどうだった?

 好きなアーティストの新曲が出たんだって?


 本当に何でもない些細ささいな話を。


 少年から青年へ向かう狭間の中で。

 馬鹿みたいにはしゃいで見せた。

 君と話せるのが本当に嬉しくて。


 段々と君に惹かれていくのを僕は感じていた。


 あの頃は学校と言う狭い世界の中で共に過ごす時間が全てだった。

 最初は思春期特有の熱病みたいなものだったのかも知れない。


 話す内に君から目が離せなくなっている自分がいた。

 初恋なんて幼少期に終わっていた。

 早熟だった僕はそれが恋と呼ばれるものだとすぐに自覚したんだ。

 そうなれば後は速かった。

 荒れ狂う激情。

 そう。これが恋焦こいこがれるってヤツだったんだろうな。


 多分、君も僕に好意を抱いてくれていると思っていた。

 気付いていた。


 自惚うぬぼれなんかじゃない。

 そんな確信めいた何かがあった。


 僕は人の心情を読む事にけていた。

 感情を敏感に察する事にけていた。


 それが幼き日の呪縛によるものだとも気付かずに。


 君に想いを告げたい。

 そんな強い気持ちはあった。

 一方で。

 心地良いぬるま湯のような状況に浸っていたかったのかも知れない。

 でも――日常ってのは簡単に崩壊するものなんだ。


 彼女の親友から聞かされた。

 ある日突然聞かされた。

 彼女も僕に好意を持っているって。

 それはもう告白と言っても良い程の衝撃。


 変わる――世界。


 鼓動が速くなり、顔が紅潮するのを止められない。

 心身からだは火照り、胸の痛みは増すばかり。

 早熟とは言ってもまだまだ未熟な僕が有頂天になるのは当然の帰結。


 君と触れ合う永遠とも思えるほどの時。

 あの頃の僕は君といつまでもこうしていられると思っていた。


 僕は君に伝えたいと思った。

 この想いを。


 でも動けなかった。

 何故か君に告げる事はできなかった。

 たった一言が言えなかった。

 君に見つめられると体が動かなくなって頭が真っ白になるようになった。

 せっかく自覚したと言うのにこれは何かの呪いなんだろうか?

 この異常な感覚に僕は戸惑う事しかできなかった。


 何故?

 何故声が出ない?

 体が動かない?

 彼女の目を見る事が出来ない?

 今までのように振る舞えない?


 何故?何故?何故?何故?


 僕たちの関係はきしみ、そして歪み始めた。




 ときは流れ――




 それから僕は何人かの女の子と付き合った。 


 それでも。

 それでも想いを捨て去る事はできなかった。

 心の奥底で小さく輝くともしびが消える事はなかった。

 想いを打ち明けられなかったばっかりにくすぶり続ける揺蕩たゆたう小さな炎。


 あの夏の日から10年。そして……。


 どんなにっても目の前に浮かんでくる。

 まるで蜃気楼のように揺らめいて。


 あのときの後悔。

 それが心をさいなむんだ。

 言いたかった。伝えたかった。叫びたかった。


 気付くのが遅すぎたんだ。

 人を本当に好きになるって言うのはこういう事だったんだなって。


 奇跡だったのに。

 出会った事も。

 恋に落ちた事も。

 そして想い合えていた事も。


 大人になって分かった事がもう1つ。

 いまだに僕の心が呪いにいましめられていると言う事実だった。

 精神は儚く脆い。幼い頃であれば尚更だ。

 

 全てはあの忌まわしき心身虐待の日々。


 人の心情を察する事が出来る?

 単に人の顔色をうかがっているだけだろう?


 感情を察する事が出来る?

 単に相手の機嫌を損ねるのが怖くて、卑屈になっているだけだろう?


 今となってはもう夢幻の如き日々。

 蜃気楼の如きあの思い出。


 全ての原因が分かったところで『あの頃』は既に遠い過去の遺物。

 心の奥底に眠る夢の残骸。


 人はそれを未練だと言うのかも知れない。

 いつまでも想っている姿が男らしくないと言うのかも知れない。

 単に美化された思い出だと断ずるかも知れない。


 だが僕は。

 どう言われようが大切にしていきたい。


 そう思える。


 今なお揺らめく青い蜃気楼BLUE MIRAGE


 それが今の僕を支える全て。


 吹けば飛んで消えてしまいそうな儚い蜃気楼。


 それだけが心のどころ

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