Ⅳ
……いつの間にやら、私は眠ってしまったようだ。掛け時計を見上げてみると、時刻は朝の七時を迎えていた。
「うげぇ……。あ、頭が……」
酔っ払いの友人は、苦しい二日酔いに悩まされている。竪琴を奏でるタントリスは、すでに帰ってしまったらしい。
「おい、起きろ。水でも飲むか?」
「あー……」
彼はうんうんと呻きながら、冷たい水に口をつける。私は店を片づけがてら、先ほどまで聞いていたはずの、不思議な物語を思い出そうとした。
「なぁ、おまえ。タントリスの話、覚えているか?」
「あー……? タントリスぅ……?」
友人は頭を押さえながら、いやに不機嫌な声を出した。「二日酔いなんだから、話しかけるな」とでも言わんばかりだ。
「昨日の夜、話を聞かせてくれただろう。『最後の戦い』の、真実とやらを……」
「あー? んなもん、忘れたわ……」
どうでも良さそうな顔をして、彼はカウンターに頭をつけた。あれほどまでに絡んでいたのに、本当にいい加減なやつだ。
「全く……」
私は彼に呆れながらも、自分も何も覚えていないことに、思わず頭を捻った。真実とは、ひどく曖昧で、実に儚いものだ。……そう思うほどに、私は彼の聞かせてくれた話を、きれいさっぱり忘れてしまった。
詩人=タントリスの回想 中田もな @Nakata-Mona
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