あるところに見た目だけで判断するざまぁな男がおりました

猫の集会

見た目だけでいいの?

 私は、小学校三年生の時この学校に転校し

 てきた。

 杉野くるみ。

 髪の毛は、もっさりのおかっぱ。

 先生の合図によりドキドキしながら教室に

 入った。

 するとひとりの男の子が

「うわっ、人形みたいでこえー」

 って言った。

 クスクス笑うクラスの人たち。

 人形みたいって言って来たのは、雪之助君

 という男の子。

 しかもよりによってその子の隣の席になっ

 てしまった。

 席に座るなり机を離してきた。

 私は、雪之助君をじっと見た。

「なんだよ…こっちみんなよ。キモいから」

 …転校早々キモい。

 あー、なんか気が重い。

「雪之助、新しい教科書届くまで杉野さんに

 教科書みせてあげてね。」

 先生のその言葉に、ウザそうに教科書を見

 せてくれる雪之助君。

「あ、ありがとう。」

 シーン

 せっかくお礼を言ったのに無視されてしま

 った。

 早く教科書届きますように。

 

 次の日…

 やってしまった。

 消しゴムを忘れてしまった。

 勇気を振り絞って雪之助君に話しかけた。

「あのっ、消しゴム忘れちゃって…」

「は?だから?」

「貸してほしいんだけど。」

「嫌だねキモい人形女め」

 えっ…

 その様子を見ていた後ろの席のありさちゃ

 ん。

 そっと消しゴムを貸してくれた。

 ありがたい。

 雪之助君は、自分より背の低い男の子をち

 びって呼んだり、走るのが遅い子をカメさ

 んと呼ぶ。

 ひどい。

 でも、かわいい女の子にだけは、優しい。

 

 それから一週間が過ぎた頃から私は、少し

 ずつクラスのみんなと馴染めてきた。

 家の片付けも落ち着いてやっといつも通り

 の生活ができるようになった。

 よし‼︎

 取り戻すぞ!自分‼︎

 やっと髪留めを段ボールから発掘したので

 髪をスッキリまとめた。

 朝、ありさちゃんにかわいいねって褒めて

 もらえた。

 わーい。

 

 …なぜか隣の席の雪之助君がじっとみてく

 る…

 クラスに慣れてきたおかげで授業中バンバ

 ン手をあげて発表した。

 体育では、マラソンで一位をとった。

 勉強もできて運動もできる事が分かると、

 休み時間沢山の女子に囲まれてあれこれと

 質問タイムが始まった。

 

 始めは、ぼっちだったけどいまでは笑わな

 い時はないんじゃないかってくらいみんな

 とおしゃべりして笑いあっている…んだけ

 ど、とにかく最近雪之助君がよくこっちを

 見てくる。

 なんだろう…

 

 やっと教科書が届いたある日

 あ、雪之助君教科書忘れたっぽい。

 見せてあげる?って聞いたら絶対いいって

 断りそうだったから、スッと教科書を見え

 る位置に置いてあげた。

 

 

 さらに数日後

 雪之助君が消しゴムを忘れてしまったみた

 いだ。

 次の時間は、テスト。

 消しゴムがないと辛いだろう。

 私は、消しゴムを二つに割った。

「消しゴム切れちゃったから、コレあげる」

 雪之助君にそう言って差し出した。

「ありがとう。お前いいやつなんだな」

「ふっ、今更知ったか、バカめ」

 私の言葉に雪之助君、

「おれ、気の強い女嫌いじゃないぞ」

 なんて言ってきた。

 

 はじめの頃は、キモいだの人形だのって言

 っていたくせにちょっとかわるとすぐこれ

 だ。

 まったく単純な男め。

「そうなんだ。でも私は、人をバカにするよ

 うな発言する人あんまり受け入れられない

 なー。」

 と言ってやった。

 はじめの頃私をいじめた仕返しに言ってや

 った。

 ざまぁだ。

 はぁ〜、スッキリしたー。

 

 正直雪之助君は、好きじゃない。

 弱いものいじめするし。

 でも、私は嫌なことされたからって同じよ

 うにいじわるするのは、本当は好きじゃな

 い。

 だから、雪之助君が困っていたら教科書を

 見せてあげるし、消しゴムだって貸す。

 他にも怪我をしたら大丈夫?って声かけし

 たり、気分が悪くなって早退しようとして

 いたら、そっと帰りの支度を手伝ってあげ

 た。

 

 

 最近の雪之助君は、友達を罵るような発言

 をしなくなっていった。

 

 

 それから二十年以上が経ち私は、結婚した。

 一人娘がいるのだけれど、クラスの〇〇ち

 ゃんは、自慢ばっかりするし嘘もつくから

 大っ嫌い。心に黒い花が咲いてるんじゃん

 って友達が言ってた。黒い花だよ。やばく

 ない?てパパに話していた。

 するとパパは、

 〇〇ちゃんは、きっとみんなにすごいねっ

 てほめてもらいたいんだよ。嘘は本当は、

 つかない方がいいけど何か理由があったの

 かもしれないね。黒い花が咲いていても、

 誰かに優しく声をかけてもらうことによっ

 て美しい花に咲き変わるかもしれないよ。

 パパがそうだったように。

 そう言いながらこっちをみながら優しく笑

 う雪之助君。

 

 雪之助君は、昔雪のように冷たい心の人間

 だと言われていたらしい。

 でも、その雪の心を溶かしたのが私なんだ

 って。

 そう。私たちは、結婚したのであった。

 

 

 

 

 おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あるところに見た目だけで判断するざまぁな男がおりました 猫の集会 @2066-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る