第317話 三人目の残骸。
「何がおかしい」
俺はそう言い、ナラクの首に刃を向ける。
反対側――カプラが刃を首の肌に当てる。
「君は変わらないな――桐矢くん」
銀髪少女をちらりと左の青で見て、妙な顔をする。
「勝つ――とかさ。はは……この世界で、そんな事、意味が無いのに――なあ?」
俺が言葉を口にするより早く。
カプラが言う。
「あんたこそ、馬鹿じゃないの」
「は……?」
「……何を言い訳してるんだかさ」
金色の瞳をナラクには向けず、続ける。
自身へ向けた――台詞。
「いじけて、静観するだけじゃ、前に進まないんだから」
口を開き、ナラクはカプラを見る。
一瞬、純粋な少年のような顔だった。
「……お前には分からんさ」
瞬きをすると、青い瞳をしている。
それでも、鉈落俊也の頃の色では無い。
その姿に戻りはしない。
「――
揺れ出す。
俺達の足元――石造りの床が揺れている。
建物全体、この塔全体が揺れているのか?
違う。
地面そのものが揺れている。
「俺の孤独なんて」
大きな音を立て、壁全体に亀裂が入る。
さっき、ナラクが空けた穴から、階層全体を横に割る様に伸びた。
遠くや近く――そこかしこで、衝立や家具が倒れて、壊れる。
「教えてくれよ、桐矢。死んで、転生して、身体を失って、記憶を削られて……俺には、もう分からないんだ」
立ち上がる、ナラク。
カプラが慌てて刃を立てる。
しかし、それをすり抜けた――銀色の身体が。
「俺は――誰だ。何者なんだ」
穴の外――下の街から、無数の声が聞こえる。
叫んでいる。
何千、何万の民草が。
ナラクの洗脳スキルは、切ったはずなのに。
「こんなんで俺達……本当に、生きていると言えるのか――?」
そうか。
もう一人、いるんだ。
洗脳スキルを持っていたのは、一人じゃない。
森の魔女、雪原の赤がそうしたように。
バックアップがいる。
三人の聖者……しかし、街に建っていた塔は四つ。
聖者は四人いて、偽物は二人。
気付いた時――足音に気付く。
誰かが……上の階から降りてくる。
栗色の髪が見える。
「久しぶり」
俺は、名前を呼ぶので、精一杯だった。
「マドンナちゃん……――
「うん――桐矢夕くん」
転生前の想い人。
こんな近くにいたなんて、想いもしなかった。
「お前……どこまで、関わったんだ……?」
「んー、何に関わったって?」
あの時から変わらぬ容姿。
変わったのは服装だけ。
白いローブを着て――銀色の杖を持っている。
幻覚で何度も見た、白き転生術師と同じ格好だ。
黒く染まっていく髪。
その白い袖から手を出し、白い指を立てていく。
「どれに関わった――って? ラピスへの催眠の事? それとも、魔女を産み出した実験の事?」
「全部か。
「……そう」
「何でだよ。お前は……女だろうが」
「だから、よ。記憶を覗ける、あなたの為の策なの」
「俺の為……?」
口の端を歪め切り、彼女は笑う。
「騙されたでしょう――ねえ?」
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覇者のフォーミュラ‼︎〜最強ゲーマーの俺、異世界にて【強奪】と【付与】で無敵ハーレムを創り上げる。 松葉たけのこ_@バッタケ! @milli1984
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