NO148/犯人!ワールドカップ!

ケンジ1985年昭和60年12月23日(日)

私の預金80万円を盗んだ犯人。確実になるまではこの日記に名前は書きたくはなかったのだが、今日労働金庫へ出向き、防犯カメラのとらえた写真を見せてもらった。

ズバリ、その写真に写っていた人物は、只今行方をくらませている私と同部屋で寝起きを共にしていた、Tであった。13日の夜から姿を消し、今は部屋の布団もヤツの荷物も全て事務所で引き上げて仕舞ってある。

六畳の部屋に私一人で寝ている。ヤツの布団のあった場所が広く空き、畳の上に窓から射し込む冬の日差しが鈍く光って妙に寂しい。


1974年昭和49年12月27日(金)

Tは23日午後三時頃派遣事務所へ来たところを逮捕された。


・・・・・突然ですが、ケンジが大変な時に申し訳ないのですが、書かずにいられない!

2022年令和4年11月24日(木)6:30

やったーーーーーーーーーーーーーーーー!

勝ったーーーーーーーーーーーーーーーー!

サッカーワールドカップカタール大会

日本代表ドイツに勝った!!!!!!!!!試合終了から6時間以上、仕事の為に一寝入りしたけれど、その勝利の瞬間を思うと、

心が震えるというか

心がキュンキュンするというか

心がウルウルするというか

うれしいが止まらない!

昨日は、朝から日本代表のユニフォームを着込み、仕事中もそのまま制服の下のユニフォームを意識しながら一人密かに盛り上がっていた。

帰宅後、風呂食事等、早々に済ませ10時キックオフを迎えた。

試合開始早々の、前田大然のシュートで興奮マックス!でも、オフサイドだって!!

大丈夫、またすぐに決めてやる。と気を取り直す。

しかし、それからはドイツの一方的と言えるような猛攻が続く。正直、ドイツ強ェな、パス回しがうまいな、かなわネェな、打ち消しながらも良くない予感がよぎる。

そしてPKで1点を入れられた。

前半が終わった。


日本代表の皆さん、失礼いたしました!

あなたたちはそんなもんじゃなかった。

後半に入って森保監督は、浅野、三笘、南野、堂安など、攻撃的な選手を次々とピッチに繰り出す。すると雰囲気は一変、前半防戦一方だった日本代表が、攻撃しているではあーりませんか!まるで前半は相手を抑えて、後半は攻めまくると決めていたかのよう。

実はオレいち押しの三笘選手、鋭い切り返しで中へ斬りこみ、深い位置に待つ南野選手に地を這うパス、それを南野選手、ダイレクトに中央へ送る。ドイツの絶対的守護神ノイアー選手、堪らず正面方向に弾き返した。

そこに走り込んで来た選手がいた!

堂安様だ!倒れ込みながら確実にインサイドキックでゴーーーーーーーーーール!!!

1対1!同点!

試合前は引き分けでも御の字なんてご意見が多かったけれど、人間は欲が深いよ、もう1点でも2点でもいれちゃえ!いや、入れられる!

しかし、ドイツも必死!日本ゴールに襲いかかる!それに立ちはだかったのが、やる時はやる日本のゴールキーパー権田選手、いったい何回連続のシュートだったろうか、それをことごとく止めた!

その時、スタジアムの観客全員じゃないかと思うほどの拍手、歓声!

まるでスタジアム全体が日本を押しているようだ。鳥肌が立った。何かの予感。

自軍エリアでドイツのファールがあった。代表初先発の板倉選手、ボールをすぐセットして右サイド方向へ大きく蹴った。

ボールはきれいな放物線を描いて落ちて来る。ジャガーのような走りで浅野様が落下点に追いついた。ドイツのディフェンダーが一人必死で迫る。浅野様が巧みなトラップで自分の走る方向にボールを落とす。スピードが鈍るどころか、トップギアに入ったようだ。

ゴールは間近、でもほとんど角度がない。

かまわず浅野様は右足を振り抜いた!ボールは、ドイツゴールキーパー、ノイアー選手の顔の左横そばをぶち抜き、ゴールネットの天井部分を破りそうな勢いで吸い込まれた。

感情が爆発した!夜中の11時過ぎ、近所迷惑を考えるなんて微塵もなく雄叫びを上げた。一緒に見ているカミさんも娘も手が痛くなるんじゃないかってほど、立ち上がって叩いている。

なんて感動だ!ホント、心が震えた!

アディッショナルタイムが7分もあり、ハラハラも止まらなかったけれど、終了のホイッスルは鳴ったのだ。

もう一度バンザイだ!


正直に言おう、前半ドイツの攻撃に翻弄されている日本代表を見て、まだまだ世界のトップクラスとは差があるなぁ、ベスト8なんておこがましいんじゃないか、なんて思ったりしちゃったんだ。

日本代表の皆さん、ごめんなさい。とんでもない気の迷いでした。

あなた方はベスト8になるチームにふさわしい、いや、決勝まで行っちゃうんじゃないのって、今では確信しています。


ケンジ、途中でごめんね。またあらためて日記やりましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る