NO146/仲本工事さん
ヒロト2022年令和4年10月22日(土)
仲本工事さんが亡くなった。10月19日81歳だった。車に轢かれて?!悲し過ぎるよ。
仲本さんとは鮮明な思い出がある。前に少し触れたかも知れないないけれど、改めて振り返らせてください。
石井ふく子さんプロデュースの舞台で2演目、延べ3ヵ月あまりご一緒させていただいた。
仲本さんの四角い眼鏡の奥の優しい目、いつも微笑んでいる口元、怒っているところやイラついているところは見たことがなかった。
「夢千代日記」というお芝居では、東京新橋演舞場で公演の後、大阪公演も一ヶ月ほどあった。その大阪公演、初日開いて間もないある日、
「まさき君、今夜空いてる?ちょっと付き合って」と、仲本さんからのお誘い、大阪だもの、帰る先は寝るだけのホテル、断る理由は微塵もない。共演のたけし軍団芹沢名人にもお声がかかった。
終演後、仲本さん、芹沢名人、俺っちの三人でとりあえず喫茶店にいると、ラフな感じでちょっと強面、そしてやり手な感じの大阪のおっちゃんが高そうなセカンドバッグを抱えてやって来た。
はっきり聞く訳にもいかず、今でもその方の正体はわからないのだが、仲本さんのファンというか、応援している人なのは確か。
喫茶店に入って来ると、席には着かず、すぐ食事に行きましょうと言う。
小さくても小洒落たステーキハウスで、柔らかくて旨い肉を食った。そしてその大阪のおっさんが勘定しているところを、それとなくチラッと見るとキャッシュで一万円札を10枚以上払っていた。
「どうもご馳走様」、、、ではなかった。ここからが本番。
「ほな、いきまひょか」
おっちゃんと仲本さんが先を行く。芹沢名人(以後、名人)と俺っちが続く。
着いたところは、ミナミのクラブ。現在の語尾が上がるクラブとはちゃいまっせ、キレイなおねえさんたちがセクシードレスで、お酒やお話の相手をしてくれはるとこや。
仲本さんはふかふかのソファーに収まって、ただただニコニコしている。隣にはキレイどころがぴったりと寄り添っている。名人と俺っちはおねえさんたちのお相手。おねえさんたちは、アンタ上沼恵美子か!ってくらい話が上手くオモロイ。めくるめく夜はあっという間に過ぎていく。
翌日、寝不足を感じさせない立派な舞台をつとめ上げ(チョイ役ですけど)、帰ろうかという時、仲本さんが「まさき君、今日も空いてる?」、こちとら、今日も明日も空きっぱなし、「ハイ」と答えてついていくと、その先にはまた昨夜のおっちゃんが待っていた。そして、昨夜とはまた違うクラブへとあいなったのです。
約一ヶ月の大阪公演で、10数回のお呼ばれがあった。クラブのはしごなんて誰が出来るの?それをさせてもらったのです。
ミナミのクラブ、キタの新地のクラブの違いも何となくわかった。20数年前のことで今はどうなっているのかわからないけれど、ミナミのおねえさんたちはとにかくお客さんを楽しませようとする。キタのおねえ様方は優雅に、私たちを見ているだけで楽しいでしょう、という感じ。
ミナミのおねえさんたちは前髪をくるっと立ち上げている人が多い。ちいママはみんなより高く上がっている。最後にママさんが来たら、一番高く立ち上がっていた。キタのおねえ様方は栗色のロングヘアを優雅にウェーブさせている人が多く、最後にママさんが来たら、素敵な和服で髪は見事に巻き上がっていた。
クラブ通いなんて、後にも先にもこの時だけでした、ホンマに。
大阪のおっちゃんに何かお礼をした方がいいですかね?と仲本さんに聞くと、いつものように四角い黒縁の眼鏡の奥の、三日月を下向きにしたようなやさしい目で、「名人とまさき君が盛り上げてくれてたからそれでいいんだよ」って言ってくれたので甘えてしまったけれど、それで良かったのかなぁ。
大阪のおっちゃん、本当にありがとうございました。
東京では少人数の打ち上げを仲本さんが主宰して、そこにも名人と俺っちを呼んでくれた。メンバーがすごかった。主演の三田佳子さん、藤山直美さん、北村和夫さんらがいらして、渋谷東急百貨店本店近くのスナックを借り切り、夢のようなひとときを過ごさせていただきました。名人と俺っちは前座として景気づけに歌わせてもらったし、だんだん座が乗ってきて、三田さんも歌ったし(なんか可愛らしかった)、藤山直美さんの歌声が素晴らしかった。「仲のいいたかじん兄さんの曲を歌います。たかじん兄さんエエ人でっせぇ」と、『東京』『やっぱ好きやねん』を熱唱、素晴らしい!感動ものだった。いただき!それから俺っちもカラオケで、ここぞという時のレパートリーとして歌わせてもらってます!
仲本さん、渋谷センター街のど真ん中にあるビル5階の「ななし」、仲本さんが経営していたお店にもよく寄らせてもらいましたね。まだお元気だったお母様が、仲本さんよりちょっと大きめなおめめだけどそっくりな笑顔で迎えてくれましたね。お店のかんばん娘でした。
仲本さん、お母様が大好きだったんですよね。月並みな言葉だけど、お母様とまたあっちで、あのあったかい店をやってください。
そのうち寄らせてもらいます。
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