NO128/ケンジホストクラブ、俺夢の続き4

ケンジ1976年昭和51年8月1日晴れ

ジロー君、アトム君と天理の「子供おじば帰り」に来ている。

今日も無事終了。しかし、最近つくづく自分の欠点というものがありありと解るようになってきた。万事物事に接する時、常にさめたような状態で自信のない態度が目立つ。我ながら気をつけなければいけないことだ。もっとも自分の体の状態の良い時にはそうでもないのだから、常に健全なる心身を心掛けるということだろうか。それにしても他人と話をしている最中に、「イヤー、これはいかん、今の私の話し方は妙にいじけた話し方だ」とか、「ずいぶん弱気な話し方だ」などと考えながら話をするのは明らかに常人のなす技ではない。


ケンジ1976年昭和51年8月20日(金)晴れ

昨夜は11時に「ナイト浅草」という兼ねてから新聞広告で目をつけておいたホストクラブにTELし、その足で急遽面接に行き、挙げ句は今朝 6時頃までカウンターとして、ホストクラブの実体をいろいろ観察してきた。

本当はホスト希望で面接を受けたのだが、私はスーツも持っていなければ金も無いということで、とりあえずカウンターがいないので一ヶ月カウンターをやっていろいろ勉強してみてからホストをやったら、ということになった訳なのだ。

それにしても急であった。私としてはTELだけしようとして部屋の豆電球もつけたままで出掛けて行ったのだが、まわり回ってその日のうちに即仕事をやってきたのだから。身なりも着のみ着のままでTシャツ、Gパン、サンダルといったラフなスタイル。それでもカウンターなら勤まっちゃうのだから大したもんだヨ!でも結局、今朝までやってみて何かやる気を無くしてしまった。私は行くのをやめようと思う。


ヒロト2022年令和4年8月1日(月)

弱気な話し方を嘆いていたケンジが、ホストクラブか。この真逆のところに行ってしまうケンジが、本人は大変だろうけど外野は面白いんだよなあ。

さて、

『70歳 俺っちの夢の続き日記』その4

展開が急。

新しい仕事が8月3日からになったので、とりあえず再会を果たそうと、プロダクションの女性代表、アイハラさんと連絡を取り、1日の昼に事務所のある渋谷区の初台で会うことになった。

新国立劇場前で待ち合わせ。

24年前、山崎努主演「リア王」で舞台の上に立った劇場だ。懐かしいというより、自分がこのでっかい石の塊のような建物の中の、しかも舞台の裏側、楽屋まで入っていたことが不思議な感じがする。

小柄の女性が少し遠くに見えた。帽子を目深にかぶり、サングラス、柄つきマスク、顔が全然わからないけど、アイハラさんだ。

俺の顔を見るなり、「年月感じるわ」だって。あんたの顔はどうなってんの?

劇場の上にあるレストランでランチ。そこでサングラスとマスクを外した顔を見て、正直年月を感じたけど、そこはさすがの俺っち、

「全然変わらないじゃん」偉いでしょ。

積もる話はたっぷりある。あっという間にランチもデザートの、ブルーベリーアイスが運ばれて来た。美味しいランチでした。

一応払おうとしたけど、ご馳走様になった。

さあ事務所へ。すぐ目の前の雑居ビルの3階、ちっちゃなカフェも兼ねた店舗兼事務所だ。もっとも一般客は殆どないらしく、自分たちのサロンみたいだ。代表はパソコンチェックがあり、そこで少し待たされた。窓から新国立劇場とオペラシティのビルが大写しに見える。よくぞこの場所を選んだものだ。

「お待たせ、じゃ稽古場行こ」

稽古場?サロン風事務所を出て少し奥のドアを開けると、そこは板張りの壁鏡張りの立派な稽古場になっている。女性3人と男性1人が何やら稽古をしていた。まずはみんなに紹介された。そして稽古の続きを見る。ユーチューブ用のショートコントらしい。

「まさきさん、コロナの疑いがあって休んでるヤツがいるから、代わりに読んでくれる?」

紙2枚のプリントを渡された。どうせならと、みんなの輪に入った。男性の息子の設定だ。2、3回やって代表が、

「まさきさん、息子じゃおかしいから、おじいちゃんでやってみて」と来た。

自分なりに即興で台詞を変えてやった。俺っちはこういうのは乗っちゃう方。ウけた。

「この役、まさきさんで行こう、いいでしょ、来週撮影だから」

何でもやります、ってメールした手前、断ることはできない。稽古は続く。

しばらくして、髪の毛メッシュで細身の若いお姉さんが、おはようございますと入って来た。

「まさきさん、ダンスの振り付けのカンコさん」ん?ダンス?振り付け?

「じゃ早速いきましょうか」

カンコさん、「今回はパラパラでいきましょう。足はツーステップ、手はワンツーの間に3交叉でお願いします。」

お願いしますって言われたって、、、

結構俺っちはリズム感あるつもりだったんだけど、とんでもない。

しばらく繰り返して、「では音楽流しながらやってみましょう」みましょうって。

よくわからないまま音楽が流れ出し、

ハイ ワンツースリーフォー~~~~

適当にやったら阿波おどりみたいになったり、コント55号ジローさんの飛びます飛びますになったりした。

カンコ先生は、「まさきさんはそれでもいいかも」って言ってくれたけど、来週までに絶対にマスターしてやる!

あれ?何真剣になってるの?さっき20年振りに会ったばっかしだよ。



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