NO127/夢の続き日記3
ケンジ1976年昭和51年5月2日(日)曇り
今日は、モウリさんと茶店や上野公園でだいぶ話をした。それは意外にもモウリさんの弱音であった。二人だけでやっていくには限界がある。私とモウリさんの動きだけでは、先ず始めの人目を惹き付けるまでが容易ではない。新しいコントのイメージとしてはどうしてもヤナギさんの動きが欲しいというのだ。またそうした方が第一線に出るのも早いというのだ。確かに私としても、今の私とモウリさんのコントにヤナギさんの動きのセンスの良さが加われば、人目に付くのは必定だと思う。またそれの方が早く売れるし、花を咲かせるのも早まるような気がする。
でも、モウリさんの口から今の二人ではまだイメージに遠い、三人でやろうてな言葉を聞くのはちょっと悲しかった。
ケンジ1976年昭和51年6月7日(月)曇り
さァ―始まった。トリオ、私、モウリ、ヤナギの三人。今日の稽古は目一杯四時間、さすがにヤナギさんは稽古となると熱心だ。次から次へとやろうと言い出し、モウリさんのゆっくりズムから比べるとだいぶ中身が濃くなった。まとまりの方も最初にしてはいい方で、立ち回りの方はもう申し分なし。問題は私の演ずるオチの部分のみ。さて、私も頑張らなくっちゃ!
ケンジ1976年昭和51年6月10日(木)曇り時々雨
今日も三人稽古、だいぶまとまってきた。
ヤナギさんはもう来週のスターアクションのリハーサル日に三人で行ってスタッフに見せようとまで自信を感じさせた。しかしモウリさんはもう少し、ということだ。私が考えるに、このコントはもっともっと面白くなる要素があるように思える。現に今もこうしたらああしたらと二つ三つ新案が浮かんでいるのだ。だからもう一つ余裕を持ってそこで一気に!こういう寸法でいいんじゃないかな。
さて、今夕は三人で稽古を5時過ぎに終え、
実は危うく営利誘拐で三年刑務所に入らされるところを、その無実が判明し、相手の親が告訴を取り下げたために間一髪難を逃れ、昨日約二ヶ月ぶりに拘置所から出所して来たというヤナギ、モウリ両氏の親友で元大内剣友会で私の先輩でもあるナンゴウさんに三人で会って来た。新宿で会って、刑務所や留置場での体験談をいろいろ聞いてきてだいぶ勉強になった。
ケンジ1976年昭和51年6月28日(月)曇り
さて、いよいよどうにかまとまった。三人コント。明日の裁断はどう下るか。これだけ稽古したのだからまるで駄目ということもないだろう。思いっきりやるしかない。風邪の方はほとんど治ったようだが、まだ頭痛がする。明日はスッキリとしてくれればよいのだが。このままうまくいって欲しい。
とにかく今夜は明日の成功を祈って眠るだけ。日記をとる手もそぞろである。
うまくいきゃーそれでよし、うまくいかなかったらまた何か作るところから始めである。
7月10日のスターアクション本番で私の二年あまりに及ぶアシスタント生活にも終止符が打たれるし、この一つ一つ丹念に努力しているこの成果、そろそろ発揮されてもいいだろう。決断を下したのだからあとは私次第。
私のやる気が真のものか否か。
ケンジ1976年昭和51年6月29日(火)曇り
ダァー、現在地獄の底って感じ。大失敗。
あんなにあがったのもめずらしい。人前でギターを弾いてやるのが、あんなにも至難の技とは夢にも思わなかった。
今日リハーサル終了後、モウリ、ヤナギ両氏との三人のコントを「やじうま寄席」のスタッフに見てもらったのだ。私の最初のギター弾き語りの部分。足はガクガク指は震え、ギターを弾いているというより雑音を立てているといった感じ。まいったよ。汗はダラダラかくし。これでもう当分私は地の下の生活かも。ヤダネェー。
それにひきかえ私らの後に見てもらったジロー君とアトム君の誉められよう。うらやましい限りだよ。
でもヤナギさんモウリさん、そして私の魂は燃え続けている。そう簡単にはへこまない。
ヒロト2022年令和4年7月30日(土)
ケンジ、苦戦しているようだね。
これもケンジの歴史。正直に日記に語ってくれてありがとう。
こっちの方は、今の店で働くのはあと二日。
お客さんに閉店することを話すと、
「えっ!困る、ここのシャケ大好きだったのに~」
「えっ!次からどこで買えばいいの!?」
「えっ!おじさんと会えなくなるの寂しい」
等々、だって。
「だったらもっと早く、もっと買いに来いよ!」
って突っ込みたくなるのを我慢して、
「お世話になりました。ありがとうございます。」と頭を下げるここ数日です。
さて、俺っちの夢の続きです。
家族に伝える機会がやって来ました。
『70歳 俺っちの夢の続き日記』その3
カミさん、娘、そして俺っち、夕食の時間で揃った。この間の俺っちの誕生日に、叔母から届いた赤ワインを開けて乾杯。
カミさん、機嫌が良さそうだ。
今、今しかない。今言おう。
「かんぱ~い。あのさ、今度の仕事、ちゃんと休み取れるし、俺、また、役者、やろうと思うんだ。」
俺っち、言っちゃったよ。
すると、
「それってさぁ、私、言おうと思ってたの、
またやればって。」
カミさん、サラッと言いやがった。
娘を見ると、
「ミーツー」だって。
よっ子おばちゃん、今日の赤ワイン、
格別に美味しいです。
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