NO110/揺れるオレたち

ヒロト2022年令和4年7月6日(水)

〈おれっちの就活日記〉

息子のやんちゃな友達が店長として勤めている魚屋を見て来た。本人はいなかったが、周りの街並みも含めてブラブラしてみた。

大きなターミナル駅の一つ隣の駅、一駅でこんなに違うのかという程、こぢんまりと静かな駅前だ。その駅前の普通のスーパーストアのような商業施設の一角にある魚屋。商品陳列はきれい、価格もそれなりで安売りをアピールするような店では無さそうだ。制服は、丸首の黒シャツに黒頭巾黒エプロン、なんだか忍者みたいでカッコいい。

従業員募集の張り紙がある。

早番 7:00~16:00

遅番 15:00~22:00

時給 1100円

7時か、5時半には出なくちゃいけないけど、主要駅までの電車、バスはまだ動いてない。30分間の早朝散歩と洒落込むか?

時給が1100円のままだと厳しいなあ。今度、面接の時にどうなるかだね。向こうから是非来て欲しいなんて場合は期待できるだろうけど、応募する形だから難しいよね。

ショボい話だけどこれが現実なのよ。


ケンジ1975年昭和50年2月19日(水)

今日もマラソンをして、発声をして、ヌンチャクの稽古をして、一人寂しく前途不明の不安を抱え、稽古を終えた。

そして、明日演芸場でやる「何でそうなるの?」の券をもらいに日テレへ行くことにした。券が果たしてまだあるかどうか心配だったので一刻も早く行きたかった。結局三枚手に入り、昼食もついでに食べてきた。

そこで一つのニュースがある。その帰り、日テレの玄関を出ようとした時、不意に私の左腕を持って親しげに声をかけてくる者があったのだ。私は驚き、目を向けると、それがなんと、見たこともないような絶世の美人。何でも「ホラ、万才やってる人でしょ?」てなことを言って来たところをみると、きっとどっかで、私とジローのコントを見た人だろうと思うのだが、私には全く覚えがないのだ。

でもずいぶんニコニコ気安そうに話しかけて来たところをみると、彼女の見たコントでの私が、余程気安く受けとめられたのだろう。

これは喜ばしいことである。とにかく人から声をかけられた、それも美人から、私はうれしい。でも今はもうそのコントもできない。

ちょっと悲しい。

それにしても彼女は一体誰だろう。日テレのジャンパーを着てたから、日テレの社員に間違いあるまい。


ヒロト2022年令和4年7月6日(水)その2

間違いあるまい。・・・

じゃないのよ、ケンジ!聞かなきゃ!何も始まらないよ!

でも、何を言っていいのかわからない、ドギマギしてアワワしてる姿が目に浮かぶ。

まっ、そこが、ケンジのケンジたる由縁なんだけどね。


ケンジ1975年昭和50年3月1日(土)

私の生活は、現在は沈黙状態である。これから起こるであろう波乱に備えて、じっくり腰を据えてこれからの展望をうかがっているところなのだ。

一体私はどうなるんだろう。いつまでこんな不安定な状態で生活して行くのだろう。どのくらい頑張れるのだろう。後で後悔などしないだろうか。どうなるかねェー!とにかくやるだけやるさ!四十過ぎた頃には、きっとどうにかなってるだろうと思う。ひょっとしたら、調理人になってるかもね!これはあくまでも、今私に閃いた霊感からである。どうなるか?!


ケンジ1975年昭和50年3月18日(火)

さて、今夜はジローのお別れ麻雀大会で千百五十円負けてきた。よく負けるねェー!イナムラ君の一人勝ち、ジロー本人がどんケツ、三千いくら負け、オバラ、ナカノ両氏もそれぞれ五百円から千円ぐらい負けた。今夜のイナムラ君はついていた。

これでジローともお別れ、泣いても笑ってもオワリ。

そんな今日のリハーサルでの私の出来はマァーマァーであった。そして最後に、これを書こうか否か迷ったのだが、やはり書くことにしたメインエベント。

そのリハーサルの後で、酒井先生からもらった映画招待券で、サユリちゃんを誘ったのである。三月中の平日ということで、21日に詳しく決めることになったのだが、心よく私の誘いを承諾してくれたのだ。何と嬉しいことか。私は26日か27日に一緒に見に行くつもりだ。

ああ、これが実行されるまで、きっと私の気持ちは落ち着かないだろう。



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