NO109/コンビ解消、でも47年後に気持ち届いた!

ヒロト2022年令和4年7月3日(日)

ケンジ、リアルタイムのジローさんの日記だよ。ケンジの気持ち、届いてる。


『ジローの日記』

2022年6月29日

浅草演芸ホールの出演は、正月興行だったと勘違いして今まで思い込んでいました。

それと、一日だけと思っていたが、三日間も出演していたのは嬉しい勘違いでした。

何故、正月興行と勘違いをしていたかと言うと、最終日?に「三平師匠からお年玉です」と言ってポチ袋を渡された記憶があるのです。その日のトリが、林家三平師匠で、出演者、関係者?全員にお年玉を渡されたのだと思います。


2022年7月2日

年末の演芸ホール出演がまあまあ成功したのに、何を悩んでいたのだろうか。

東京へ出てから三年でスターという、甘いかも知れないが、自分の中にある強い思いがあったようで、思い通りにいかない現実に葛藤していたのだろう。

まだ若いのだから、もっと余裕があればよかったのにと思うが、焦っていたのかも。


ケンちゃん、いろいろと苦労をかけたね。

この頃のジローが、もっと懐の大きい奴だったら良かったけど、余りにも小さ過ぎたよね。

相手の事まで考える余裕は、まだないよね。


2022年7月3日

ケンジの言っている事が今なら良くわかるし、理解できるなあ・・・

全てその通りだと思うが、当時のジローは頭デッカチで生意気だったと思う。

それが原因で、その後アチコチで失敗した事を思い出す。


ケンジ1975年昭和50年2月7日(金)

最近はどうもジローのことばかり書いていたが、どっこい他にも書くことはあるのだ。というのは、例の万病の薬とやらで有名な「アロエ」を鉢で買って来たのだ。そして今日は

「アロエ健康法」という本と「生ジュース健康法」という二冊の本も買ってきたのだ。これで後はミキサーとか買って毎日飲めば、もう鬼に金棒、怖いものなしである。まさに、

ウッシッシィーである。早く毎日生ジュースを作って飲みたいなァー!

さて、ところで明日はいよいよ草加の本番でコントをやる訳だ。ジローとはどうもうまく稽古ができなかったけれども、もうこうなれば捨て身で、「くるま座」時代に戻って、どォーンとでっかく構えてやってやろう。それしかないよ。


ケンジ1975年昭和50年2月8日(土)

今日はスターアクション本番で草加まで行って来た。私はどういうわけか、昨夜はちっとも寝付かれず、夜中の一時頃起こった地震に怯えたりしていて、とうとう三時頃まで眠れないので新聞を読んだ。結局、今朝まで熟睡はできず、今日の本番では、目が無性に痛くてたいそう困った。どうも私は寝不足するとすぐ目に来るのでいけない。

そんな悪いコンディションの中で、ジローとの仲も意志の疎通も全くできていないままに、まさしく最低のコンディション、最悪の状態の中で、今日例のコントをやったのだ。

勿論、本番前に正幹さんや緑川さんにちょっと見てもらい、手直ししてもらった。しかしその後、二人ともその指摘された部分を合わせようともせず、本番に臨んだ。

終わってみんなに意見を聞いてみると、まぁーまぁー評判は良かった。特に東海林さんなどは、「だいぶよくなったよ!あとは場数を踏むことだけだ。」とまで言ってくれたし、大石君なども、「けっこうおもしろかった。あのコントは元来、爆笑のくるものではないからあんなところじゃないかな。」と言ってくれた。それはそれでいい。

しかし、ジローは私が前々から「ここは気をつけてくれよ」と言ってたところなど、やりたい放題のことをやってくれた。

ジローが今後、いつまでも「二人のコント」のためにやる気を起こさないのだとしたら、その時はこっちから強く決断の意を表明する以外にあるまい。でも三月いっぱいは何としても二人で続けたい。

とにかく私から解散の直接の動機を作るようなことはしたくない。

ここはもう一つ、心を大きく持って、持ちこたえようではないか!ねェー!


ケンジ1975年昭和50年2月10日(月)

今日は久し振りにボディビルとマラソンと発声をやり、気持ちが落ち着いた。それに相反して、ジロー君は今日もとうとう12時には来てくれなかった。私が掃除を終え、ジロー君のところへTELをすると、寝ぼけた声で電話口に出て、今まで寝ていた、ということだった。それには私も、もう言うセリフもなく、とにかく待っているから来てくれ、と呼びだした訳だ。

三十分ほどしてやって来たが、私は即、余計な理屈は抜きで、二人でコントを続けていくか否か、二つに一つの返事を乞うた。

結局、言いにくそうに、遠回しな言い方ではあるが、もう続けていく気はないとの旨を聞いて、私は速やかに、それなら今日でやめよう、と決断の意を求めた。彼もそれにハッキリ言わないまでも同意したので、私も胸のつかえをスッーと撫で下ろした如く、即そう決めて別れて来た。勿論、あくまでも仲良くという前提だけは確固としている。

これで、明日リハーサルでスタッフの人たちに一応話して、そこで確実な結論が出るであろう。とにかく二人の意見がハッキリしてスッキリした。


ヒロト2022年令和4年7月4日(月)

うーん、とうとうきたね。読んでいて、急に『ジロー君』と、『君』が付いた時点で、こりゃ何かあるぞという感じはした。

ケンジが68年生きて来た中での、たった一年足らず、でもその一年足らずがとても濃く、貴重なものだと強く伝わって来たよ。

まずはご苦労様。

しかし、これからまた、ケンジの日記の旅は続きに続く。何がケンジを待ち受けているのだろう。



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