NO106/ピンチ

ケンジ1975年昭和50年1月8日(水)

どうも私の顔は、何もしないでボケーっと

している時は、ずいぶんふくれっツラに見えるようだ。昨日米村先生に、この間「ほんものは誰だ!」の時撮った写真を見せてもらって、つくづく思った。何が不服なのか、妙にふくれて、不機嫌そうで、つまらなそうな顔をしているのだ。勿論、これから写真に撮られるからと身構えている写真はそうではない。知らないうちに撮られている写真、つまり、自然の私が普通に立っている時の写真が、全てそういう感じを与えるのだ。参ったねェー!

いつから私の人相はこんなに悪くなったのだろう。私の心の中が悪ビレて来たのだろうか。それが顔に現れて来たのだろうか。


ヒロト2022年令和4年6月29日(水)

うん。高校の時からの印象は「なに考えているのか、わからない」ような顔してたな。

それだけに、ちょっとはにかんだような微かな笑顔を見られた人の得点は、高かったと思うよ。特にヨシブーといる時は、笑顔が多かった気がする。

人には言えない悩み、誰しも何かしらあるものだね。

長じて、クラス会では、ちょっと困ったような、見ようによっては悲しげな表情をする時があったなあ。


ケンジ1975年昭和50年1月11日(土)

あっーよかったよかった。今日は本年初仕事、スターアクションの本番で水戸まで行って来た。万事順調よかったね!ていう感じ。弁当も二つ食ったし、昨日まで休んでいた例の安い食堂「あつみや」も今日はやっていたし、そこで早速カキフライと魚フライを食べたし。とにかく生活の歯車は、元に戻った。

そして明日からはジローと一緒に稽古とくれば、あとはそれを順調に運ばせるのみ。今年は、稽古を短く濃くやる方針で、いろいろやり方も考えたし、きっとうまくいくだろう。

それに、私はもっともっといろいろ勉強したいし。

この一年は、より実りの多い年にするよう頑張らなくては!ねェー!


ケンジ1975年昭和50年1月12日(日)

今日も朝から天気がよかった。一日まぁー充実していた。最近は「ジャン・クリストフ」は読むわ、ギターは稽古するわで、かなり規則正しくなって来ているのだ。それに今日から、ジローとの稽古も始まったし。

でも今日の稽古では、今年の先行きが心配されそうな雲行きであった。何か二人の間には、私が今読んでいる「ジャン・クリストフ」の如くの、愛情で結ばれている夫婦の間の、又は、友情で結ばれている友人の絆が、倦怠という恐ろしい魔力に襲われて崩壊していくような、そんな時期に直面している感じで、何だか、二人、相通じぬ、意固地な感情が充満しつつあるのだ。

まぁー私の思い過ごしであればいいのだが、今の調子が続けば、ひょっとすると、ひょっとするといったところなのだ。とにかく意見が合わないし、歩調が合わないのだ。まぁーこういうのは、ボチボチ良くなるかも知れないけれども。


ケンジ1975年昭和50年1月20日(月)

とうとう今日はジローの告白を聞いた。案の定、「オレ、今すごく悩んでんの、コントやめようかな」てな調子のものであった。ヤツのことだからたいていこんな事だろうと思っていたのだが、どうしてよりによってこんな時に悩むかねェー!とにかく一年間と約束した期日まで、あと三ヶ月あまりだというのに、こんなところで弱音を吐くとはだらしのねェー、結局甘い奴よ!まだそこが、彼の子供っぽいと言われる、また私が見てもそう感ずる所以であろう。何かハッキリとした意志を持たないのだ。もっともそうなってくると、私としてもおちおちこうして構えてもいられなくなるのだ。何せ、私にとってもジローがやめるとなれば、重大な決断と実行に迫られるのだから。

それにしても参ったねェー!こうなってくると、残る三ヶ月間がのびのびと出来にくくなると思うのだ。さてこの先どうなるか。一つ性根を据えてこの重大な場にのぞもう!


ケンジ1975年昭和50年1月21日(火)

結局今日も一人で稽古をやった。とうとうジローは本格的に参ったらしい。ここは私としてももうしばらくは忍耐だろう。しかしそれにしても、コンビの一人がやめるなんて言い出すと、せっかくやる気のもう一方までやる気を削がれるということになるから物事は怖い。もし、明日でも明後日でもジローが稽古に出てくるようになったとしよう。でも、これだけ中が抜けて二人の間に隔たりできたような感じになっちゃったからには、またいつもの調子が出るまではだいぶかかるだろう。

私の予想では、おそらくジローはダメに近いだろう。どっちにしても、私としても強く生きぬかねば!

まぁー人生を長い目で見れば、そう焦る必要もないし、まして宇宙を考えてみれば、ほんの些細なことなのだ。今、この地球から何億光年、何兆光年離れている星では、一体何をやっているであろうのォー!一つ機会があったら、恐竜のいる原生林が茂った、湖と砂漠のある、食い物に不自由しない星へ行ってみようかな!


ヒロト2022年令和4年6月30日(木)

〈おれっちの就活日記〉

ケンジ、ピンチだね。実はおれっちの就活もピンチだ。47年半の時空を越えてピンチがシンクロしてる。

おれっちの一番の候補だった、前いた商業施設の魚屋の店長と電話で話をした。彼は、勿論自分としてはおれっちに来て欲しいと思っています。だがしかし、今売り上げが、以前より半減しているので、本部からは厳しい人件費削減命令が下っていて、人を減らすばかりで増やすのは難しいのです。ということ。

そう言えば、今の商業施設の魚屋も売り上げが落ちていて、出勤する人の数も少ないようだ。あぁ、おれっちを待っていてくれているみなさん、戻る居場所が無いよぉ。

こうなると、今の店の経営者が同業種の店を紹介してくれるのを待つか。やんちゃな息子の、いやいや、おれっちも知っている息子のやんちゃな友達が、最近、やっぱり魚屋(別会社)の店長になっていて、やんちゃではない息子が、人手不足で大変らしいよ、聞いてみたら。と教えてくれた。これもありかな。

とにかく、これを機に、週4日みっちり働いて、ある程度の収入を得て、あとの3日は自分の夢のために費やしたいと密かに画策しているのだ。まだ内緒にしといてよ。

なんだ、魚屋ばっかと思うかも知れないけど、せっかく積み重ねた知識と巧み?な営業トークを使わない手はないと思うのです。

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